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老化・放射線・ストレスと免疫の関係

難病末期癌からの生還区切り線

 
年とともに襲ってくる容姿の衰え、体力の低下は気になるもの。しかし体を守る免疫機能は、それほど加齢の影響を受けずに頑張っている。
 
 

 
程度の差はあれ、だれでも年をとれば皺が増え、髪が白くなり、体の衰えを感じるようになります。では、体のなかで、加齢による変化がもっとも大きい臓器はどこでしょう?
 
答えは胸腺。T細胞という免疫細胞を血中に送り出している臓器です。
 
胸腺は、青年期をピークに縮小をはじめます。40代で大部分は脂肪化し、細胞の数は10分の1程度まで減少。70~80歳ともなると、1グラム程度の小さな脂肪のかたまりのようになってしまいます。
 
とはいっても、胸腺がT細胞を訓練して送り出すのは、お母さんのおなかにいる頃。妊娠2~3か月頃です。乱暴な話ですが、生まれた後に胸腺をとっても、免疫系に大きな影響はみられません。つまり、今私たちの体内を巡っているT細胞は、胎児のときにつくられて、その後分裂したもの。なかには20~30年生き続けるT細胞もあるので、胎児の頃にできたT細胞をまだもっている人もいるかもしれません。
 
 

 
というわけで、胸腺が年齢の影響を受けても、同じようにT細胞が影響されるわけではありません。実際に、1歳から100歳までの人を集めて調べたところ、T細胞やB細胞のリンパ球の働きにはほとんど年齢差がなく、加齢の影響を受けにくいことがわかりました。
 
その理由のひとっとして考えられるのは、免疫系に記憶があるからです。子どもの頃にハシカにかかれば、記憶をもったリンパ球が保存され、次に同じウィルスが侵入したときに備えます。脳の記憶機能は年とともに衰え、今朝なにを食べたかさえ忘れてしまうことがあります。が、リンパ球の記憶機能は衰えません。計算上、人間の免疫系は300年程度は働き続けてくれるはずです。
 
しかし残念ながら、年齢の影響を強く受ける免疫細胞もあります。それはNK細胞です。この細胞は生体防御の前線にいて、細胞がウィルスに感染すると真つ先に発見して破壊し、感染の拡大を食い止めたり、ガン細胞を出会い頭に破壊するパワーをもっています。この力が加齢とともに弱ってくるのです。70歳と20歳のNK細胞の活性を比べると、明らかに70歳のほうが低下していることがわかります。
 
高齢になるほどガンの発生率が高くなるのは、NK細胞の衰えと関連しているのかもしれません。年齢とともに低下するガン免疫をいかに活性化するか。これは一般の人だけでなく、免疫学者も大いに気になるところなのです。
 
 

 
1945年8月、広島に投下された原爆で被曝した人は約35万人。年末までに約14万人が死亡したと推定される。放射線は人体にどんな影響を及ぼすのか。
 
 

 
広島の原爆投下から約2か月間に死亡した人たちのおもな死因は、敗血症。つまり感染症だったといわれています。私たちの体のなかで、放射能にもっとも弱いのは免疫系なのです。
 
放射線は、細胞の遺伝子(DNA)を傷つけます。遺伝子は設計図のようなもの。この設計図をコピーしながら、新しい細胞かつくられます。通常、遺伝子は核の奥深くに潜んでいますが、細胞分裂をするときに一瞬、無防備な状態になります。そこに放射線があたると、遺伝子が傷つくのです。たとえば遺伝子の傷が修復される際に、一部が欠けたままになったり、間違ってほかの遺伝子と結合したら? 正しい設計図の細胞はつくれなくなってしまいます。
 
筋肉や神経などは分裂しないので放射能の影響を受けませんが、免疫細胞は分裂がとても盛ん。私たちの体内で一日に生まれかわるT細胞やB細胞は、なんと約100億個。それだけに、放射線による障害を受けやすいのです。
 
 

 
骨髄のなかには、免疫細胞や血液細胞のもとになる「造血幹細胞」があります。T細胞もB細胞もマクロファージも、赤血球も血小板も、すべて造血幹細胞が分化してできたもの。放射線を1シーベルト以上浴びると造血幹細胞は傷害を受け、出血、血液細胞の減少などさまざまな急性症状があらわれます。
 
照射量が多くなれば、当然ダメージは大。新しい免疫細胞が供給できなくなり、免疫系がなくなってしまいます。だから、体内に侵入する細菌やウィルスなどを排除できなくなり、感染症で死んでしまうわけです。
 
動物実験によれば、致死量の放射線を当てると、免疫系ではまず胸腺がダメージを受け、胸腺内にあるT細胞の遺伝子がズタズタに切断されて死滅。そのうちB細胞もマクロファージもつくれなくなり、死に至ります。ちなみに、人間にとっての致死量は7シーベルト。99年9月、茨城県東海村で起きた臨界事故で死亡した2人の作業員が浴びた放射線量は、6~20シーベルトだったといわれています。
 
照射量が致死量まで達していない場合は、数か月で造血機能が回復し、被曝前のレベルに戻りますが、異物を発見して排除する免疫システムの実働隊ともいえるT細胞は、機能が低下。抗体を産生するB細胞は逆に増加。バランスが崩れてしまいます。なぜこのような状態が起こるのかは、まだわかりません。
 
ある調査によれば、広島では50年頃に白血病が多発。60年頃からは各種のガンが増えはじめ、今でも赤血球には変異細胞が多く見つかるといいます。
 
 

 
不況、リストラ、人間関係、家庭の問題・・・私たちの周りにはストレスの素がいっぱい。じつはストレスが免疫に大きな影響を与えているのだ。
 
 

 
私たちの体の臓器や細胞は、自律神経系の交感神経と副交感神経の刺激を受けて動いています。たとえば血管は、交感神経の支配下では収縮し、副交感神経の支配下にあるときは拡張します。これによって血液を循環させているわけです。心臓のポンプ運動も呼吸も、腸の蠕動運度も同じ。では、免疫を担っている白血球はどうなのでしょう。
 
近年、重要な免疫臓器である胸腺やリンパ節などにも、自律神経の末端が届いていることが判明。顆粒球やリンパ球などの白血球も、自律神経系の刺激を受けていることがわかってきました。
 
具体的にいうと、侵入した細菌、死んだ細胞などを食べて処理する顆粒球は、交感神経の支配下に。ウィルスや細菌、感染細胞を退治する免疫の要・リンパ球は、副交感神経の支配下にあるのです。
 
交感神経が優位に働いているのは、おもにストレス下や緊張状態にあるとき。一方、副交感神経が優位なときは、リラックスして気分が落ち着いています。
 
それなら、顆粒球を働かせるためにストレスを感じたほうがいい? NO! 顆粒球は細菌などを処理した後に、酸素の悪玉といわれる活性酸素を大量に発生。その結果、まわりの細胞や組織を広範囲に傷つけてしまうのです。またストレスを受けて顆粒球が増加すると、相対的にリンパ球が減るので、感染防御力が落ちてしまいます。
 
 

 
ストレスは脳の視床下部という部分を刺激します。すると、脳からの信号が腎臓のそばにある副腎という臓器に送られ、ホルモンが分泌されます。これがステロイドホルモンです。ステロイドホルモンにはさまざまな作用がありますが、免疫に関する作用で重要なものを列挙してみましょう。
 

  1. 胸腺を萎縮させ、リンパ球(T細胞)の成熟を妨げる
  2. 大量に分泌されると、末梢血中のリンパ球(T細胞)を破壊する
  3. 免疫反応を全体的に抑制する

 
このようにストレスは、あらゆる方向から免疫細胞の機能を低下させていることがわかります。
 
ちなみに、体内時計(サーカディアンリズム)の狂いも免疫に大きく影響します。ある実験で、昼夜逆転した生活をする人と、通常の生活をする人の白血球数を比較したところ、不規則な生活の人は顆粒球が増加し、リンパ球が激減していることがわかったのです。
 
早起きして、昼間は楽しく働いて、夜はちょこっとビールを飲んでぐっすり眠る・・・これが免疫機能を高める理想の生活かもしれません。
 

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