末期癌と闘われる方々への
希望や勇気となりますように

難病末期癌からの生還~タイトル画像小

食養生と栄養学について

末期癌克服への架け橋区切り線

 
ここでは食養生の考え方における食事についての注意点を書いておきます。この食養生の食事を実践すれば、免疫力向上・体力維持と併せて、効果的に体質改善を行うことができ、真の健康体へ戻せると思います。勿論、健康な人が病気にならないために食養生の考えを取り入れるのも良い事だと思います。
 
ただ病中病後の方は、食養生の考え方を完璧に取り入れるよりは、何でもバランスよく食べる事(1日30品目以上)の方が大切だと私は思います。私の父の場合は、入院中および病後も体力回復が第1目標なので、食養生の徹底というよりは「 基本は何でも食べさせる事」「嫌いなモノ・美味しくないモノを無理に食べさせて、ストレスを発生させる事のないように」心掛けました。勿論、酸化した油脂・飽和脂肪酸の多い乳製品・添加物入り食品(加工食品)などは避け、塩分や動物性タンパク質 (赤身の良質な牛肉)などは適量摂取を心掛けています。
 
あと、ページ下に我が家が取り入れている日々の食生活の栄養バランスを補助するサプリメントを、ご参考までに記しておきます。
 
 

 

たばこは絶対にダメ。

と言っている本人の父は全く言う事を聞かず、ずっとピースを吸い続けていましたが...皆さんは絶対に真似はしないで下さい。私の父のように「 免疫賦活物質を飲んでいればタバコを吸っても大丈夫」なんて絶対に思わないで下さい。
 

白砂糖はなるべく使わない

特に難病の場合は、白のみならず、黒砂糖、蜂蜜、みりんや、他の甘味料も禁止。難病でない場合は、黒砂糖ないし米アメか麦アメを一週間に1~3回とるくらいなら可。現在ならエリスリトールがお薦め。
 

酸化した油脂は絶対禁止

難病の場合、油そのものを避ける。酸化した油脂とは・・・

  1. 時間の経った油脂すべて(特に不飽和脂肪酸は、極めて短時間で酸化する)
  2. スナック菓子すべて(当然揚げたてのスナック菓子などありえない。例え揚げたてでも油そのものが酸化している可能性が高い)
  3. 煮干し、カツオぶし、マグロぶし、魚の干物、ちりめんジャコ、めざし、など(これらの食品は、よく健康に良いと言われるが、きわめて酸化していることに注目してほしい。またタンパク質は変成し、きわめて腐敗している)

 

過食、大食は絶対にダメ

「腹八分に医者いらず」と昔から言われるが、腹六~七分でちょうどよいくらい。どれほど体に良いと言われるものをとっていても、食べ過ぎてはなんにもなりません。つまり、消化不良を起こし、必ず腸内腐敗になり、それにともなう悪しき原因を生み出します。
 

牛乳、チーズのような飽和脂肪酸が多い乳製品はなるべく避ける

白砂糖などと比べればはるかにマシですが、飽和脂肪酸が多く、動脈硬化のもと。整腸作用目的でヨーグルトを食べる場合は、低脂肪タイプ・無脂肪タイプをセレクトして下さい。
 

夜食は絶対ダメ。また、食べて眠るのはダメ

人間の生理には、眠っているときは腸は働くが胃は働かない、という特徴があります。食べてすぐ眠ると、胃に食物がたまり、それが寝ているあいだに腐敗してしまう。食べたら必ず3~5時間は起きていましょう。
 

よく噛むこと

「鶴亀の齢願わば鶴々と 飲まず亀亀(噛め噛め)亀よ亀亀」という狂歌が江戸時代からあります。とにかく噛めば長生きをするということを言った狂歌ですが、やはりそのとおりだと思います。噛めば食物が微細化して、さらに唾液腺酵素が出現し、唾液腺ホルモンも出現し、消化が大変良くなります。栄養素はスムーズに入りやすくなるし、微細化した繊維素は便塊を多くつくり、腸内毒素の掃除につながります。また、噛むことは頭部全体の運動となるので、脳に良い刺激を与えるのです。
 

動物性タンパク質は少なく。特に肉・魚は問題

これらは大変タンパク質が多いのですが、腸に入り分解する過程で、必ずアンモニア、アミン、硫化水素、ヒスタミン、フェノール、インドール、スカトールといった、体に有害な毒素を産生します。特に動物性タンパク質の過剰摂取は、さまざまな病気の原因になります。それを避けるには、食物繊維の積極的摂取と適量摂取を心がけて下さい(卵は2015年まで1日1個以上は食べ過ぎと言われていましたが、最近の研究では常識的な個数であれば1日に何個食べても健康に悪影響はなく、逆に身体にとって非常に良い影響があると分かっています)。
 

主食は白米を避ける。また、白パン、白うどん、といった精製物は問題

玄米がベストだが、よく噛めない場合、かえって問題になるので、噛めない人は、三分づきか五分づきにします。酸化せず、発芽玄米粉が販売されているので、これを積極的にとります。
 

無添加、無農薬の食品を選ぶ

かまぽこ・ちくわ・はんぺん、ハム・ソーセージ、チーズなどの練りものは、ほとんど添加物だらけなので、なるべく避ける。
 

「身土不二」になるべく従う

身土不二とは、その土地のものを食べ、季節のものをなるべく摂りなさいということです。
 

穀物中心の食生活

「一物全体食」こそ健康のもとです。
 

醗酵食品を積極的にとる

よい味噌、よい醤油はきわめてすぐれた発酵(酵素)食品です。生野菜・果物も生きた酵素が多く含まれ良い。最近では植物発酵食品の治療補助用製品もあるので、入院時や食欲不振時はそういうもので補うと良い。
 

漬物は積極的にとる。

塩分の取り過ぎには十分ご注意を。
 

飲み水は、水道水はダメ

良い浄水・活水器を水道の蛇口につける。残留塩素ゼロが望ましい。さらに水を活性化してくれるものがお薦め。良い水については、別ページで詳しく記します。
 

酒類は、ほどほどに

絶対ダメというほどでもないが、たまに飲むくらいにしたほうが無難です。
 

睡眠はよくとる

体が酸化しにくくなると、必然的に睡眠は短時間で済むようになります。
 
 

 
病中病後は、病院治療の副作用などでどうしても食欲がなかったり、特定の食べ物しか身体が受け付けなかったりします。でもそのままでは、栄養バランスが取れず体力も免疫力も低下し、再発や転移、その他の病気に罹る恐れも出てきます。本当に健康に戻れるかどうかは病中病後が一番大切な時期なので、積極的に栄養バランスを取るように心掛けて下さい。以下、我が家が取り入れている補助サプリメントです。ご参考にして下さい(一部入手困難なものもあります)。
 

①米国製マルチビタミン剤

アメリカの医師が健康維持に推奨する人気No1のマルチビタミン剤です。シルバー向製品もあります。1日1粒の服用で、成人が1日に必要なビタミンやミネラル等がほぼ補えます(必ず水分および食事と併用して下さい)。我が家はUCLA医学部卒の友人に依頼して輸入してもらっています。このマルチビタミン剤は父だけでなく、家族全員で健康維持のために服用しています。
 

②秋田県産波動焙煎発芽玄米粉(超微粉末)

現在のところ、まだ一般には販売されていない製品だそうです。こちらの製品はUCLA医学部卒の友人の知り合いの方が製造されている製品だそうで、ファンケルなどの発芽玄米粉と比べて、かなり新鮮で成分的に良いそうです。玄米の栄養価をより高めるために胚芽を発芽させてあります。白米・玄米に比べて、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富です。発芽させる事によって、特にγ(ガンマー)アミノ酪酸という血液の流れを活発にし、代謝機能を促す働きのあるアミノ酸が大幅に増えています。この製品は超微粉末の波動焙煎なので、1日30グラムで玄米100グラムを摂った事に等しく、少量で玄米の持つ栄養を十分に摂取出来ます。お米に混ぜて炊いたり、お好みの飲料に混ぜて飲んだり、小麦粉と同じように料理に使ったり出来ます。
 

③若返りアミノ酸製品

加齢により免疫力は低下していきます。これは自然の摂理なので避けようがありません。でも最近では若返りを可能とするアミノ酸製品が世に出ています。若返る事が出来れば、免疫力を高める幅も広げることが可能であるという事ですので、私の父は体力維持・向上と合わせて若返りも実践していました。
 

末期がん克服への懸け橋区切り線

 

 

栄養学とは

 

われわれ人間はいろいろな物を食事として摂り入れなければなりません。どんな種類の食物を、どれくらい摂れば健康を維持し、健康を増進させるかを研究する学問が栄養学です。
 
現在社会でよく使われる言葉として、その病気は食事療法で治そう、とか、体質改善は食事療法しかないといいますが、これは異常な代謝に合うような食事を作り、それを与えることにより病気が快方に向かったり治ることです。すなわち健康となります。これらを病態栄養学ともよんでいます。これは栄養学の一分科にすぎません。
 
栄養素があるものとはどんなものか、まず最初にあげなければならないものとしては、
 
 ①体の構成成分となりうるもの。
 ②体の筋肉などを動かさねばならないもので、エネルギー源となりうるもの。(糖質、脂質、蛋白質などは熱源となる)
 ③体の調整とリズムができるもの。(これにはビタミン、酵素、ミネラルが絶対必要)
 
以上の三点によって健康の維持と増進が完成されます。
 
われわれの体はただ背が伸びるだけの生長ではなく、生長すると同時に成長もしなければなりません。新陳代謝をしつつ生長、増殖、分化、成長、運動、感受性、変性、再生、老衰、死を迎えなければなりません。これらを充分満たしたものが栄養学なのです。
 
「あなたは栄養が非常によい」とか、「あなたは栄養が非常に悪い」などということがありますが、それは何を条件としているのかをあげてみると、
 
 ①正常に発育している。年齢にあった身長と体重があること。
 ②十分に活動できること。スタミナも十分あって、また、コンディションが最悪であっても働ける能力のある体であること。
 ③肉体的、精神的に健康を保てる栄養があるもの。
 ④自然治癒力があること。病気や体外からの刺激、ストレスに対して耐えることができる体力を作る栄養素があるもの。
 
 

 
たとえば、体温が高くなった場合、それを平熱の状態に戻そうとする働きや、運動した後の呼吸が速ければ、それを正常な呼吸数に戻そうとする働きがあります。人間が生きていく上で常に一定に保とうとするメカニズムが働く、多かったら、少なかったら、高かったら、低かったらというように正常に戻そうとする働きがあります。これを恒常性、ホメオスターシス、Homeostasisといいますが、体温、呼吸、血圧、水分、成長、血液、免疫、ホルモンなど、体のあらゆる面で常に一定に保とうとする働きがあります。このバランスが恒常性ですが、これが保たれている状態を健康といいます。また、このバランスが乱れたことを病気というのです。わかりやすくするために体温を例に説明すると、我々の体温は36±0.5℃に保たれています。その体温は24時間一定ではなく、夕方になると高くなり、早朝には低いのが実情です。これを日差とよんでいます。また激しい運動をした後や食事をした後などは0.5~0.8℃高くなります。
 
早朝空腹時の女性の基礎体温は排卵直後より高くなりますが、月経開始とともに低くなります。この体温を参考にして自分の排卵期を把握することができ、妊娠しやすい日がこの体温でわかります。
 
高熱の病気になると、悪感、戦慄や皮膚血管が収縮するため皮膚温は下がります。その後、体温は上がり、これに対して体温を下げようとする作用が働くため、体温は正常に保たれるのが我々の体の常です。
 
また、ナイフなどで手を切ると血液が流れでてきますが、それが数分もすると止まったり、傷口を元に戻そうとする働きが出てきます。これらも恒常性によるものです。
 
我々のように暑くても寒くても一定の体温を保てる動物を恒温動物ともいいます。
 
生理機能を乱さない生活現象を健康体といい、その生理機能の維持は多くの要素が関係していることを忘れないでほしいのです。また、それらの維持の最も大きな要素は食であるのです。
 
 

 
治癒力とは……どんな病気にもかからない体を作ることです。すなわち免疫力ができやすい、免疫力の強い体でなければなりません。それならば免疫とは何でしょうか。自然治癒力と同じように病気を免れるのが免疫です。一度病気にかかると、その病気には二度とかからなかったり、かかりにくかったり、一度かかってしまうと次から軽度で済んだり、あるいは何度でも短期間にかかる病気があります。
 
これらは人間が異物(外来性のものすべてで、病原体をはじめ自分以外のものと範囲は広い)の侵入を受けると、自分と異なるものと意識し、侵入した異物を排除しようと体中で反応します。反応した結果、蛋白質が産生されますが、この蛋白質の量が多いか、少ないかによって病気が早く治ったり、軽い時があるのです。そしてこの蛋白質を抗体とよんでいます。
 
また人間の体の中に入ってくる異物を抗原とよんでいます。考え方を変えれば、体の中に異物(自分ではないもの、すなわち非自己)が侵入した場合、それを取り除こうとしたり排除しようと努力して自分の体を乱さないようにしているのが免疫です。異物によって自分の体が乱れた状態になるのが病気です。
 
抗原が体の中に入ると、体はこれを異物と認識し、これを排除しようとします。排除してしまうことができると免疫が成立したことになります。これを免疫応答といいます。体は免疫応答によって抗原と特異的に反応する抗体と感作、リンパ球を作り出し体を守ってくれます。抗原と抗体の反応は非常に特異的であり、抗原Aに対し、抗体Aとは反応しますが、他のB、Cとは絶対に反応しません。たとえば、はしかや風疹の抗体は、コレラやエイズとは反応せず、これらは非常に特異的であるばかりではなく、非常に鋭敏です。
 
体を病気から守るということは、体内に入った異物を無毒にしなければなりません。これを中和するといいますが、これは我々人間が生きていくために極めて重要な防衛手段です。反応が起こらなかったり、反応が起こってもそれが異常であれば病気になります。それは抗体ができない時です。自然治癒力が備わっているということは、自ずから防衛能力が体に備わっているということです。体に忍びよってくる異物に対しすぐに反応できるような体を築きあげ、また反応できる能力を各細胞に維持させることが必要です。体内に侵入してくる異物、すなわち抗原は、蛋白質、糖質、脂質、有機質、無機質などと幅が広いのです。
 
 

 
外来異物が体内に侵入してきた時、そこに産まれるものは体を守ろうとする反応、すなわち生体防衛力で、生体防衛の反応は体を守るためにいろいろの反応が現われます。その主な反応として、異物を追い出そう、異物を無毒にしようとする免疫反応、これを抗体とよんでいます。異物これを抗原、抗原に対して産まれてくる物質を抗体とよんでいます。その抗体を産生する細胞はB細胞(骨髄由来のリンパ球のこと)で、B細胞は骨髄から産生されます。末梢にでてきたB細胞は、抗原やT細胞(胸腺由来のリンパ球のこと)の助けを得て、抗体を産生する細胞にまで発展し続けます。
 
免疫には自然免疫と獲得免疫とがあります。自然免疫とは字の如く、我々が生まれながら備っているもので、それによって病気から守られています。従って先天性免疫ともいわれています。一方、獲得免疫とは、生まれてから後に獲得した免疫のことであることから、後天免疫ともよんでいます。これには人工的に免疫を獲得させるので自動免疫ともよび、これは多くのワクチンにあたります。
 
また、母体内にいる時、母親の抗体を胎盤から、あるいは母乳を通じて受け取る方法もあり、これを受動免疫とよんでいます。
 
病原体を含め異物が体内に入ると、マクロファージ(大食細胞ともよんでいる)という細胞に取り込まれます。マクロファージ内に入った異物(抗原)は、リンパ球にバトンタッチして特異的に認識するわけです。リンパ球はB細胞とT細胞の二つがありますが、抗原の種類によってB細胞だけで認識されることもあります。
 


免疫の種類

  
自然免疫、先天性免疫  
獲得免疫、後天性免疫 自動免疫 
受動免疫 

 
抗原の認識にはヘルパーT細胞の助けを必要とします。抗原を認識したB細胞は分裂分化して抗体産生細胞となり、IgM、IgG、IgA、IgD、IgEの各々異なる五つの抗体を作り出します。一方、抗原を認識したT細胞は分裂、分化して感作リンパ球となります。
 
われわれが母体から生まれた途端、自力で呼吸し、自力で乳を飲むということは、免疫学的に考えれば不潔な状態といえます。いろいろな異物が口や鼻から入ってくるため、それを一つ一つ認識しなければなりません。これらの抗体は血清中のグロブリン分画中に存在し、抗体としての働きをもつグロブリンは免疫グロブリンImmunoglobulin(Ig)と総称され、五つの抗体に分類されています。
 
免疫のない人間は存在しません。その免疫はグロブリンという血液中の蛋白質であり体内を循環しています。だから、体のどの部分から侵入しても防ぐことが、可能であるのも利点です。
 
 

 
健康志向が強くなっている今日、少々スタイルが悪くても健康である方がいいという風潮があります。これを食べれば体に悪い、これを飲むと体によい、という具合に考え方が昔と今では変化しています。昔は体は二の次、たら腹酒を飲み、たら腹めしを食ったものです。それによりいろいろな病気で悩んでいた人も多く、国へ入る酒税も多かったようです。その点、現在の若者はお酒はこの程度飲めばよい、これ以上飲むと体に悪い影響を与えるのでいらない、というようにブレーキをかけるのも上手なようです。中には脱線する者もいるようですが、始めから酒は体によくないからといって飲まない若者も多いようです。
 
塩分の多い塩辛いものはがんを起こす原因になるといわれてから、塩の固まりのような漬物や佃煮はだれも食べないようです。少しでも塩分濃度の低いものを買い求め、従来通りの塩辛いものは敬遠されています。干物や乾物の魚も油が酸化されているからと食べる回数を減らしているようです。また、ケーキなどもあまり甘い物は好まれず、甘みをおさえたプレーンなものになってきています。甘い物の摂り過ぎは過剰なカロリー摂取につながり、肥満、糖尿病、乳がんなどの心配になることから、これもまた敬遠されています。
 
酒の場合、たった一口飲んだだけでも体の中でこれを無毒にしなければなりませんので、体にとっては毒物なのです。毒物を無毒にするための肝臓は働かなければなりません。
 
最近、野菜サラダや野菜ジュースなど、カロチンや食物繊維を多く含む野菜や果物をとる様心がけている人が増えています。食物繊維を多く摂ると整腸作用があり大腸がんを予防すると力説されていることも手伝っているようです。
 
こんな栄養素はこれから摂るというように、一つの素材から一つの栄養素を考えて取り、同じ蛋白質であっても、同じパターンにならないように注意が払われています。たとえば、朝、卵を食べたから、夕食には肉か魚というような具合にです。楽しく、愉快に食事を摂る事の重要性が現在解明されてきました。おいしく、楽しく、愉快に食べることは消化が優れ、また吸収もよくなります。その上、精神的に刺激されますので、消化、吸収に必要な酵素やホルモン分泌が良くなり、家庭内のストレス、社会的なストレスも拭い去ってくれます。
 
もっとすばらしい効果は、体の防衛に対処できうる能力を持つことです。年齢を重ねるにつれて体の機能も弱まり自然治癒力も衰えますが、バランスの良い食事を明るく、楽しく摂る事は、自然治癒力を高め、病気に冒されない体を作りますので長寿の秘訣となります。
 
たとえば、新鮮でバランスの良い食事であればビタミンCも多く、体内に入った栄養素を効率よく臓器に侵入させる役目を果たします。その結果、臓器からのホルモンの分泌を促し、機能の調整に役立ちます。また、ビタミンEも体内の脂肪の酸化防止に働き、機能を旺盛にします。銅は体の傷の治りを早くするメリットがあり、鉄は貧血を防ぎ、カルシウムは骨を丈夫にするなど、一つ一つの栄養素は一つ一つの優れた働き手となります。
 
 

 
過去にアメリカのデービッド少年のことは新聞やテレビで大きく報じられましたので記憶している方もおられるかも知れません。この少年は、生まれながらにして免疫がないのです。免疫能力が体に備わっていないということは、普通は害を与えない何でもない菌であっても、抵抗する力がないため生きて行くことができません。この少年は生まれた直後から無菌室に入れられ、食べ物もすべて消毒して与えられて、人との会話も無菌室に設けられた電話を通じての事です。
 
小学校へ入る年齢になっても、勉強は無菌室の中と外とで行われていました。でも、少年は十二才で亡くなってしまいました。また、世の中を騒がせているエイズ(後天性免疫不全症候群)は、エイズウイルスによって免疫ができなくなってしまう病気です。
 
免疫の主役は何といっても白血球の中のリンパ球です。エイズウイルスは、このリンパ球の中に侵入して破壊してしまいます。リンパ球には二種類あり、抗体を作るB細胞と、直接、異物や抗原に攻撃するT細胞の二つです。
 
そのうちのT細胞は役割があって分かれています(ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞など)。ヘルパーT細胞は異物の侵入をいち早く感知して、B細胞に抗体を作るように指示します。異物の働きが無くなると抗体が必要ありませんので、サプレッサーT細胞に働き抗体を作るのを中止させます。
 
また、リンパ球は成熟するとマクロファージ(大食細胞)となり異物を貪食します。好中球と共に体に入ってきた異物を食べる重要な働きをしてくれます。異物を食べたマクロファージは、その情報をT細胞に伝えます。情報を得たT細胞はB細胞に働いて抗体を産生させます。この様にマクロファージ、T細胞、B細胞の緊密な連携はなかなか巧妙です。この巧妙な関係があるからこそ病気から体を守ることができるのです。
 
このような免疫のしくみは病気になるのを防いだり、がんにならないように働いたりしますが、年をとると共にその力も低下してきます。老人になればなるほど病気しやすいのはこのためです。
 
体内に侵入してきた病原体などの異物を捕らえて細胞内に取り込み、無害なものにする細胞を食細胞といっていますが、このような働きを持つことを食作用とよんでいます。食細胞が持っている食作用は、なくてはならない生体治癒力なのです。人間の生体治癒力に与かる食細胞にはどのようなものがあるかというと、神出鬼没である好中球という白血球、これは中好性白血球、好性白血球、多形核白血球、または中性好性白血球といわれる別名があります。そのほかに単球と大食細胞を貧食細胞とも、あるいはマクロファージともよんでいます。無数の細菌群の中で生活している以上、体内にいつ細菌が侵入してくるかわかりません。入ってきた細菌をやっつけてくれるのは食細胞しかありません。
 
化膿(うみ)という現象は、抗生物質が使われ出してからあまり見られませんが、体内に入ってきた細菌と、それをやっつけようとする体内の食細胞の戦いが始まりますが、その戦いに勝つと治りますが、戦いに負けると化膿となります。その化膿を顕微鏡でみると食細胞の残骸と無数の細菌が観察されます。この食細胞の働きが弱いと体を守りきれなくなります。
 
食細胞が存分な能力を発揮するためには、やはりバランスの良い食事、これが何よりも大切です。睡眠時間を十分にとり、疲労を残さないことも食細胞のために大切です。風になびく女性の髪はなかなか美しいものですが、その髪の発育は、頭の上が女性ホルモン、耳の上や後側は甲状腺ホルモンで発育しバランスが保たれています。男性では頭の禿げた人が多いものですが、あれは男性ホルモンが過剰で女性ホルモンが少ないからです。
 
頭の毛を多くするには女性ホルモンが必要なのです。最近、小学生の女の子に円形脱毛症が多くみられるといわれています。5~10cmくらいの円形に髪の毛が抜けてしまうことからこの名が用いられています。これは今後、問題になろうかと思われますが、ストレスに自然治癒力の低下が加わったものの現われです。
 
 

 
自然治癒力が減少し病気になりやすいのは機能が衰えている証拠です。それは食物摂取の減少、あるいは栄養成分の欠如による低栄養状態になり、自然治癒力、生体防衛能力が衰えた結果です。低栄養状態になった時に最も現われやすいのは、乳児の死亡率が高くなることや、大人では感染症にかかりやすく、それらによる合併症、症状が重くなることです。細菌、ウイルス、寄生虫、菌類などの感染は低栄養状態では容易に許すことになります。
 
病気になるということは、何等かの異物が体内に侵入したためです。異物が体内に侵入したが、その体内では全く無防備であったため、体内において好き勝手に暴れ回った結果、起きた障害、その障害の程度が病気の程度となります。
 
われわれの体には自然に病気を起こさせまいとする働きや反応があります。これを自然治癒力といったり、防衛反応といいます。この働きが免疫反応です。
 
 

 
病気を起こさせる異物、すなわち原因物質を抗原とよんでいます。この抗原に対抗し無毒(中和)にしようとして作り出されたものを抗体とよんでいます。体内に入ってくるすべての異物はみな抗原です。今、アトピーの子供さんをもって悩んでいるお母さんも非常に多くなっていますが、栄養素として摂らなければならない米、麦、大豆、卵、牛乳なども体にとっては異物となります。
 
すなわち抗原です。抗原となるものは蛋白質、糖質、脂質、有機質、無機質などがありますが、これらは囗から、鼻から、目から入るものすべてです。牛乳、大豆、卵、米、麦を食べても何の障害も現われない子供が多いなかで、なぜ少数の子供がそんな病気で悩まねばならないのか、われわれにとって貴重な蛋白質や熱源として重要な役割を占めているものばかりです。
 
しかし、一部では、これらの食物を食べることにより、体のだるさ、痒み、頭痛や腹痛、下痢など、さまざまな症状を訴える人もいます。このような食物によって起こるアレルギー、すなわち食物アレルギーは、ごはんを食べても、牛乳を飲んでも、豆腐を食べても、卵を食べても苦痛や異常が起こらないのが普通です。これを俗にアレルギーの低減化とよび、この低減化が起こるのが自然治癒力です。
 
 

 
異物として入ったものすべてを抗原といいますが、それを抑えよう、無毒にしようとする防衛反応が体内で起こります。その結果、体内でできる蛋白質を抗体とよんでいます。この抗体は侵入してきた異物と選択的に反応します。どんな異物とも反応するわけではありません。
 
この免疫応答は絶対に特異的です。Aという異物に対して作られた抗体は、Aという異物のみに反応します。他の異物とは反応することがありません。これは極めて特異的なのです。この抗体は血清中にあるガンマーグロブリン(γ-globulin)という蛋白質です。
 
これを免疫グロブリン(Immunoglobulin, Ig)とよんでいます。免疫グロブリンは性質の違いにより、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの五種に分けられます。この抗体は存在する場所により、よび方も異なります。
 
すなわち、細胞の中にあるものを細胞性抗体、血液中にある時は液性抗体または血清抗体とよんでいます。免疫グロブリンとは、異物が侵入し、それに反応してできた生体の蛋白質です。これは母体を離れた人間すべてにあるもので、免疫学的にはクリーンな人間はありえません。
 
 

 
体に異物(細菌、ウイルス、かび、花粉、ダユ、ほこり、食物など多数ある)が体内に入っても病気を起こさずに、自然に発症しない力を持っていることを自然治癒力、または自然防衛力といいます。そのためには免疫が確立しなければなりません。免疫とは「病気から免れる、すなわち病気にかからない」ということで、体に異物が入ってきても病気を起こさない体を作りあげることが必要です。病気の中でも、一度かかると二度とかかることがない病気、一度かかると二度目からは軽く経過するもの、何度かかっても同じように経過する病気もあります。これらは体内に異物が入ってきた場合に、自分のものではないと判断し抵抗するための反応が現れます。
 
その反応が熱であったり、痛みであったり、痒みであったり、赤く腫れたり、すなわち病気なのです。そこで体に侵入してきた異物を排除しようとする戦いが始まります。体内に異物が侵入してくると、それに対戦しようとする反応がすぐに現われます。これが免疫応答なのです。先にも説明しましたように、この「免疫」と「応答」は極めて特異的に成り立っています。Aという異物に対して作られたAという抗体はAのみに反応し、別の異物に対しては無関係、無反応です。
 
異物が体内に入って来たことに対して作られる抗体は、その異物を中和する、すなわち無毒にすることです。これこそ、われわれが生きていくために重要な自然治癒力なのです。
 
過去に「人肉食バクテリア」という恐しい病気がテレビや新聞で報じられました。日本においてもその症例が確認されているようです。この人肉食バクテリアは、一種の細菌ですが、ごくありふれたものです。それが何故、人の体で異常な増殖をして、人を殺すまで繁殖し続けるのかが問題になります。これは体を守る自然治癒力、すなわち免疫が十分でないから起こるとされています。
 
自然治癒力が不十分であると、こんなに恐ろしい病気をも許してしまうことになります。また、ウイルス、細菌、真菌などの病原微生物にも容易に冒されてしまうばかりか、毒力もないただの微生物にしかすぎないものにまで侵入され、増殖を許してしまう結果になります。正にこれは自然治癒力がないという証拠です。体全般における抵抗力の低下を意味しています。
 
これと関連して社会問題になっているのは、老齢化に伴いあまりにも病気が多いことです。その上、体の機能が低下しているため感染されやすいことです。その病気を治すため、抗生物質、ステロイド剤、抗腫瘍剤が多用されているのも大きな原因です。高年齢化社会になり、国民が病気にかかりやすくなり、病院側へ払う医療費も増加し続けています。例えば平成四年度に支払った医療費は23兆とか、これは膨大な金額です。さらに日本は高齢化で医療費は高騰し続けています。
 
関西国際空港はあれだけのプロジェクトでも1兆とか、医療費で関空が1年に20個以上できる勘定になります。日本では世界に類がないほど抗生物質の使用量が多いといわれています。かぜをひけば抗生物質、腹が痛い、下痢をした、頭が痛いといっては抗生物質を飲む、牛や養殖のうなぎ、ハマチなどにも与えています。病気でなくても抗生物質が与えられている時世です。
 
そのため、抗生物質が効かなくなった病原細菌、すなわちMRSAは有名になりました。これは抗生物質に効かないブドウ球菌で、この菌が体内に入るとどんな抗生物質にも効かないので防ぎようがなくなります。
 
そのため死亡する例も多く困ったものです。抗生物質を飲むと大切な細菌まで殺してしまうことになり、その結果、棲みついたら困る細菌や真菌が増殖し病原性を現わします。これを日和見感染とよんでいます。
 
 

 

異物(抗原)

体内に入ってきた異物を認識することができる特殊な細胞を「リンパ球」とよんでいます。このリンパ球は異物を認識した後、いろいろな方法で異物と反応します。あるリンパ球は抗体とよばれる蛋白質を血液中に分泌したり、あるリンパ球は直接、抗原と戦って壊したり、あるリンパ球は自分単独では勝ち目がないため他に応援を求めるものもいます。
 
このようにリンパ球が抗体を産生したり、その抗体が体内を循環したり、また、リンパ組織の中にも見られます。
 
このような現象が体内で証明されたのはそう古いことではなく最近のことです。体を守ってくれる大切なリンパ球は、二つの違った性質の細胞です。一つは骨髄(Bone marrow)に由来するものであるのでBリンパ球、もう一つ胸腺(Thymus)に由来するのでTリンパ球とよんでいます。
 

肥満細胞

薬理的な活性をもった比較的大きな細胞で破壊されやすく、その活性物質は細胞質にある顆粒に含まれています。IgEをもっています。
 

好塩基球

肥満細胞とよく似ている顆粒をもっていて、その機能もまたよく似ています。IgEをもっています。
 

好酸球

細胞外に酸素を放出し、それによって異物を攻撃します。たとえば、寄生虫などに対する攻撃は特異的です。これにはIgGをもっています。好酸球は正常末梢白血球の2~5%を占めていて、寄生虫が感染すると増加します。好中球と同様に好酸球にも貧食能があります。
 
それは好酸球の一時的なものではありません。好酸球は好塩基球や肥満細胞と同じように脱顆粒を行います。脱顆粒の際に放出される内容が好塩基球や肥満細胞とは異なります。細胞が貪食できないような大きな寄生虫に対して攻撃できる唯一の手段を好酸球は持っています。それは脱顆粒です。脱顆粒とはIgGを寄生虫に結合させ、毒性蛋白質を好酸球が出して、IgGを結合させた寄生虫に攻撃しやすいようにすることです。
 
古い話になりますが、北海道や青森の猟友会会員によって射殺されたニホンツキノワグマのことを覚えている方もおられると思います。その肉を生で食べた猟友会員が全身じんま疹様の湿疹、発熱、筋肉痛、眼瞼周囲の浮腫など不名の病気に冒されました。何が原因かわからない状態が続きましたが、初心に返って血液検査をしようという事になり調べた結果、全員から好酸球が異常に多く見つかりました。好酸球は寄生虫といわれるように関連ずけられます。この寄生虫はもともと日本にはいないといわれていた施毛虫だったのです。
 
また好酸球は、肥満細胞、好塩基球、T細胞から放出された困子によって炎症部に引き寄せられたり、走せ参じてきます。また好中球はヒスタミナーゼなどを放出して、肥満細胞や好塩基球の産物であるヒスタミンなどの化学的前駆物質(Chemical Mediator)を不活性にします。そのことにより局所の炎症反応を終結させることができます。
 

好中球

好塩基球、好酸球の両方の性質を備えています。また小食細胞ともいわれています。
 

大食細胞

小食細胞以外の食細胞を大食細胞といいます。これには単球と大食細胞(マクロファージ/macrophage)があります。この細胞のおかげで抗体が作られやすくなります。
 
 

 
体に異物が侵入した場合、それを無毒化したり無害化するための物質を作り出しますが、この物質を抗体といいます。このように侵入物、すなわち抗原と、それを攻撃する物、すなわち抗体の反応を抗原抗体反応とよんでいます。この抗原抗体反応があるが故に、われわれの体は守られ健康を保てるわけです。このような体にとって重要な働きのある「免疫」は、過敏であったり、少しオーバーであったりすると自分自身の体に傷をつける破目になります。これがアレルギーなのです。
 
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、蕁麻疹など発生する部位は異なりますが、仕組みはみな同じです。
 
アレルギーについて少し詳しく説明しましょう。CoombsとGell(過敏症反応)は四つの型に分類しています。
 
抗原と抗体が結合してできた免疫複合体は、肥満細胞や好塩基球に作用してヒスタミンやセロトニンを放出させます。この物質は自身、化学走化性をもっていて、そのため全身の好中球を遊走させる働きがあります。その結果、血管の透過性が高まり、血管外へも容易に遊走できます。
 
そのため好中球が炎症部に集合することができます。そして炎症の終結に努力するわけです。
 
免疫のところで説明したように、免疫グロブリン(Ig)という蛋白質は五つあります。アレルギーの型として四つありますが、そのうちのI型のもの、すなわち、アレルギータイプはIgEの働きによって引き起こされることがわかっています。IgEができやすい場所は比較的体の表面に近いところです。たとえば皮膚、鼻腔、気管支、肺、消化管などの粘膜か、粘膜の内側の組織です。
 
これらの組織や粘膜には肥満細胞がたくさん存在しています。その肥満細胞の表面にIgEが附着すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学前駆物質が放出される結果、皮膚や肌に湿疹を起こしたり、喘息、アレルギー性鼻炎を起こします。アトピー性皮膚炎のようなアレルギーを治したり、軽快させるためには、このIgEを減らさなければなりません。IgEが少なくなれば、それだけアレルギーを引き起こす力が弱くなりますので、当然、アレルギーの症状も軽くなります。
 
またIgEがあってアレルギー反応が起きても、化学前駆物質が少なければアレルギー反応も強く起こりません。そのためには日常の食生活、すなわち体に入るものすべてがアレルギーを引き起こす源になっていますので、米、パン、うどんのような糖質はほどほどに摂るようにし、また精白した米は自然治癒力を弱めますので、玄米に近い米を利用するようにします。
 
甘いものについてはなるべくさけ、肉についてもあまり多い量を摂らずに、蛋白源として魚、大豆から摂るようにします。肉と魚、大豆は四対六ぐらいの割にして、旬の野菜や果物、海草類を十分に摂り入れるように工夫します。また夕食後の間食や夜食はいけません。これらが自然治癒力を高める条件となります。
 
 

 
身体の維持、機能を円滑にするためには、満足のいく栄養が基本となります。それらを五つにまとめてみました。
 
 ①食べて健康の維持
 ②健康と精神衛生の向上
 ③嗜好を満足させるもの
 ④食生活と食文化の向上
 ⑤精神生活の向上
 
今、私が問題にしているのは食べて健康になるということではありません。どんなものをどのようにして食べると健康が維持、増進できるかということです。
 
人間は生まれた後、だんだんと成長し続け、青年期、壮年期、老年期を迎えます。その間、活動し、子孫を残し、人間社会の繁栄を築こうとしています。そのためには適当な栄養を体外から取り入れ、それによって体を維持、増進させる同化と、体内にできた不要物質を体外に排泄する異化とが成立しなければなりません。要するに生きているものはすべて体外から何かを取り入れて体を補わなければなりません。生きている以上、体は消耗しますが、その消耗を補うために外界から何らかのものを取ることが必要です。人間が生きるために必要な物質を外部から取り入れて生命を維持してゆくことを栄養といいます。また取り入れる物質を栄養素といいます。体内に取り入れた栄養素を利用することを同化といい、利用して不必要になったものを体外に出すことを異化といいます。取り入れた栄養素を利用(同化)、不必要なものができたらこれを出してしまう(異化)ことを新陳代謝、また単に代謝といいます。

栄養素は①蛋白質  熱量素(エネルギー源になる)
    ②糖 質       〃
    ③脂 質       〃
    ④ビタミン 微量栄養素(絶対微量が必要)
    ⑤無機質       〃

の五つがあり、これを五大栄養素といいます。
 
栄養素の種類と性質、ならびに生体に対する作用、消化吸収、体内における変化、排泄、所要量などを研究するのが栄養学です。
 
 

 
食物を摂ることにより、さらに健全な生活が送ることができる、これを栄養といいます。それをまとめると次の五つになります。
 
 ①食物を摂ることにより生命の維持ができること。
 ②健康が保たれ、増進し、成長、発育すること。
 ③生活するのに必要なエネルギーを共給するもの。
 ④新陳代謝が満足に行えるもの。
 ⑤快適な人生を送るための快適な食生活が行なえるもの。
 
快適な食生活を送ることは、肉体的にはもちろんの事、精神的にも好結果が生まれることがわかっています。
 
昔のように食事をする時は①しゃべらず②茶わんを凝視する③もしもしゃべる時は口の中に物を入れない、などの仕付けが厳しかったものですが、それは却って健康にはマイナスのようです。現在の食についての考え方は、楽しく、愉快に語らいながら、ゆったりと食べることにあります。その結果、唾液の分泌や消化酵素も多く出て、吸収もよいことがわかっています。これらのことは体の抵抗力を強めたり、免疫力も高めることから健康につながるという考えです。食事の時間に笑いを取り入れている病院や、笑いを治療の為に取り入れている病院もあります。
 
栄養素を大別すると次の二つになります。
 

エネルギー源(熱量素)

体の中で燃えてエネルギーを生ずるもので、体温の維持や運動に欠くことができない栄養素です。これには蛋白質、糖質、脂質があります。文字通りのエネルギー源です。
 

微量成分

一つの食物に多くの無機質やビタミンが含まれているものはありません。一つの食物に一つの無機質と考えた方が無難でしょう。代謝を円滑に行うために必要な微量の成分で、これが多くあり過ぎる必要もなく、無ければ代謝に支障をきたします。これには無機質とビタミンがあります。たとえば、鉄が不足すると赤血球の働きが悪くなります。赤血球の赤は鉄があるからこそで、赤いということは酸素をよく取り入れるからです。この酸素の運搬がなければ人間は生きていけません。血液が少なかったり、薄かったりすると貧血を起こしますが、これは鉄欠乏性貧血です。ビタミンについては無機質の項で詳しく説明します。
 
 

 
飲食物に含まれる成分は、生体の維持、増進、生殖に必要なものを含んでいなければなりません。また、ある成分が存在することにより、健康に障害が起こる様なものであってはなりません。人間が生活上必要な栄養素は、糖質、脂質、蛋白質、ビタミン、水に分けられます。栄養の目的は「健康の維持と増進」でなければなりません。
 
1947年に世界保健機構(WHO)は健康について「健康とは肉体的、精神的ならびに社会的に最上の状態をいう」と定義しています。肉体的に健康であっても、精神的に欠陥があるようでは健全とはいえません。
 
また肉体的にも精神的にも健康であるが、しかし経済的に、社会的に不満足では文化的な生活が送れなくなります。これはWHOが目指す健康とはいえません。
 

蛋白質

体にとって最も大切な構成成分であり、分子量は数千から数百万のものまであります。これが加水分解すると約二十種のアミノ酸になることは皆さんが知るところです。細胞の重要な構成成分であるばかりか、熱源になったり、ホルモンになったり、酵素になったりする重要な栄養素です。自然の蛋白質は生理学的、物理学的の性質を変えることができ、これを変性とよんでいます。普通、われわれがよく言っている蛋白変性などは、その代表的なものです。
 
卵白を加熱すると凝固したり、生の魚肉を酢に浸すと白くなり、身が締まって硬くなりますが、これは食生活の上で、味を一層良くする事で知られています。
 
このように天然蛋白質はその性質を変えることができます。いわゆる変性です。変性は加熱、攪拌、凍結などの物理的条件で起こるものと、酸やアルカリなど化学的なもので起こる場合があります。変性が食べ物に起こる時は風味を増しますが、体の中で変性すると大変困ります。正常組織では見られないアミロイドは糖蛋白質ですが、これが脳に沈着すると「老人ぼけ」の原因になります。
 
尿酸や尿酸塩の結晶が関節内に沈着すると、激しい疼痛を伴う「痛風」になります。
 
蛋白質は体内で燃焼してエネルギーになりますが、蛋白質の一種であるプリン体の燃えかすが尿酸です。尿酸は腎臓を通って尿中に排泄されます。プリン体は血液に溶けにくく、関節や腎臓、筋肉にたまると痛風になります。
 
また、蛋白質に熱を加えることにより凝固しますが、この凝固を起こす温度は蛋白質の種類によって一定であり38~75℃の範囲です。加熱して凝固した蛋白質や、変性した蛋白質は風味や消化、吸収が非常によくなります。小腸から吸収されたアミノ酸は門脈を経て肝臓に入り、一部は蛋白質に再合成されます。グロブリン、アルブミン、繊維素となって血漿蛋白質となります。一部は肝臓で分解して糖質や脂質となり、アミノ酸は全身に運ばれ利用されます。
 

糖質

われわれが食事から摂るものの中で最も重要な一つです。これを炭水化物とよんだり、澱粉とよんだりしていますが、C、H、Oの三元素からなっていることから炭水化物とよばれています。糖質は単糖類、二糖類、三糖類、多糖類に分けられます。単糖類は甘味があり、栄養的にみて必要なもので、代表的なものはブドウ糖(別名をグルコース、テキストロース)で、血液中に多く見られます。糖質を加水分解すると、単糖類、すなわちブドウ糖になります。
 
これはエネルギー源となりやすいため、好んで食事から取り入れられます。そのエネルギーは運動のため、生命の維持のために使われます。ブドウ糖は、体内で多い時にはグリコーゲンとして肝臓や筋肉中に貯えられ、ブドウ糖が必要になった時にはグリコーゲンがブドウ糖になり利用されます。しかし、グリコーゲンのままでは利用できません。この糖類の燃えかすは炭酸ガスと水です。
 
体内に入った糖質は膵液によって加水分解されてブドウ糖になり、小腸から吸収され肝臓に入ります。ブドウ糖はエネルギー源となったり、血液によって組織に送られ消費されたり、肝臓内で一部はグリコーゲンや脂肪となって貯蔵されます。胃においては糖質の消化はほとんどされません。
 
ブドウ糖は血液100mL中に70~120㎎含まれています。これを血糖値とよんでいます。この血糖値は食後一時間前後で最高となり、以後徐々に減少して正常値に戻ります。インシュリンが不足するか、食べる量が多いと血糖値が高くなり、尿にも糖が排出されます。これを糖尿病といい、日本人の国民病になりつつあります。
 

脂質

脂質(あぶら)の定義はむずかしいもので、水にとけずに、エーテルなど有機溶媒には溶けるものをいっています。
 
脂質を別けると、トリグリセライドのような単純な脂肪のもの、これを単純脂質とよび、脂肪にリンや糖、蛋白質が結合しているもの、これを複合脂質とよんでいます。それと、コレステロールなどの不けん化脂質の三つに別られます。脂質には免疫力を高めたり、治癒力を高めるための必要成分が多く含まれています。その中でもリン脂質(代表的なものはレシチン)、不飽和脂肪酸(これにはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸など)、糖脂質、脂質蛋白質などは生体の機能を維持したり、向上させたりする必要な栄養素です。
 
不けん化脂質を誘導脂質ともいい、コレステロールの他に胆汁酸、性ホルモン、脂溶性ビタミンであるA、D、E、Kなどがこれに属しています。
 
バター、ラード、ヘッドのような動物性脂肪、油っこい肉類の多い食事を取り過ぎると血液中のコレステロールが増加します。コレステロールは肝臓に存在し、胆汁酸は肝臓でコレステロールから作られます。胆汁酸は胆汁中にあって十二指腸に分泌され、脂肪を乳化して消化を助けます。細胞膜に多く含まれるリン脂質は、その脂質が酸化されると細胞の機能が衰えるため抗酸化剤としてのビタミンEの働きが必要となります。また、神経に多く含まれている糖脂質は神経を保護すると共に、糖脂質が少なければ神経の作用が鈍感になります。
 
体の中で糖質や蛋白質を貯える能力は大きくはありませんが、しかし、脂質を貯える力は大きいものです。脂肪太りや中年太りを想像してみてください。1gの同じ重量で換算してみた場合、糖質や蛋白質のカロリーは4キロカロリーですが、脂質はその倍の9キロカロリーです。脂質は水を含みませんので容積も小さいものです。冬でもあまり寒がらない女性がいますが、それは脂肪のコートを着ているからといわれています。脂質は熱の不良導体ですので体温の放散を防ぐ効果があります。脂質は胃においてほとんど消化されません。
 
それは胃液のpHが1~2であるためで、pHが5になると胃でも加水分解されます。十二指腸に送られ、胆汁や膵液の力により加水分解され、脂肪酸とグリセリンになり、血液かリンパ液に吸収されます。
 
二重アゴやビール腹はあまり格好がよいとはいえませんが、体の脂質は内臓の保護と位置の安定に非常に役立っています。その他、比重が小さいので貯蔵しやすく、体温の維持や熱量が多いことからみても、エネルギー源として重要です。
 

 
体内にはいろいろな無機質が存在し、各所に広く分布して特有な機能を営んでいます。
 

①硬組織の構成

 骨や歯の主成分で、カルシウム、リン、マグネシウムなど。
 

②軟組織の構成

 蛋白質、脂質などが、リン、カリウム、クロール、鉄などと共に筋肉、皮膚、臓器、血液などを作っています。
 

③体の調節

 体液中に溶けて存在し、神経の感受性、筋肉の運動、分泌物や体液のpHを一定に保ったり、浸透圧も調節しています。これらに関係しているものは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、クロルなどです。
 

④酵素反応の活性化

 これには亜鉛、銅、鉄、カルシウム、マグネシウムなどが影響します。これらをまとめると次のようになります。pHの調節、浸透圧の調節、神経を刺激、酵素作用の調節、代謝に関与し調節、胃、歯の成分など、どれをとっても大切なものばかりです。
 
代表的なもの2~3を説明しましょう。
 

●カルシウム

無機質中で最も多く存在し、その大部分は骨、歯にありますが、体液中にも量は少ないが存在します。血清中のカルシウム量が少なければ骨より補給されます。逆に血清中の方が多い場合は骨に蓄積されます。血液から歯に入ったカルシウムは、再び血液に戻ることはありません。カルシウムの吸収は小腸で行われますが、吸収の程度には個人差があり、吸収はあまり良くありません。
 
頭も骨もいっしょに食べられるちりめんじやこ、わかさぎ、あゆ、小いわしなどの小魚類はカルシウム食品の代表で、カルシウムが不足になりがちな日本人には大切な補給源です。
 
また、牛乳中に含まれるカルシウムは良質で吸収されやすく、簡単に摂ることができます。一日に最低でも200mlは飲むよう心がけたいものです。
 

●鉄

赤血球が酸素を運搬するためになくてはならない成分で、成人では5g程度存在しています。その大部分は血中に含まれています。腎臓、肝臓、骨髄などに貯蔵鉄として存在しています。蛋白質は鉄の吸収を促進しますが、リン酸、シュウ酸などは鉄の吸収を阻害します。胃酸の低下も鉄の吸収を妨げます。体内において鉄を必要とする理由は、栄養と病気の項目の鉄欠乏性貧血を参照して下さい。
 

●マグネシウム

カルシウムやリンなどと共に骨を形成していますが、軟骨や体液中にも存在しています。マグネシウムは糖質代謝になくてはならない無機質です。
 

●ナトリウムとカリウム

ナトリウムが存在することにより、浸透圧の維持、pHの調節、筋肉の収縮などに影響されます。多くのナトリウムは食塩で摂取され、摂取された食塩は殆んどが吸収され、尿中に排泄されます。カリウムは野菜に含まれていますが、不足することはまずありません。
 

●ビタミン

ビタミンは微量で体の栄養を強く支配しています。この点ではホルモンと変わりませんが、しかし、ビタミンは体の中で作ることができませんので、食物として摂取しなければなりません。ビタミンCを必要とするのは人間、猿、モルモットだけで、他の動物は自分でこれを合成しています。
 
現在、ビタミン類の大量摂取、特にビタミンCの大量投与は病気の治療や予防に効果をあげていますが、その量は健康体を維持するよりも非常に多量です。ビタミンCをアスコルビン酸、ビタミンB1をチアミンというように化学名でよんでいますが、各ビタミン間には共通性がありません。ビタミンCほど話題の多いものはありません。人間ではこのビタミンCを合成する力がありませんのでどうしても保給しなければなりません。
 
ビタミンCが不足すると、出血したら止まらない病気、すなわち壊血病になります。ノーベル賞受賞者のアメリカのポーリング博士は、ビタミンCががん治療に有効であり、またかぜの予防、治療に、美容のため、老化防止のためによいと発表しています。
 
ビタミンCはビタミンEの作用と同じような働きがあります。すなわち抗酸化作用があります。そのため細胞分裂がスムースに進みます。また、生体をリズミカルにするため各機能の働きが旺盛になり老化を防いでくれます。
 
かきなどの貝類は蛋白質を多く含んでいて、そのうえにビタミンB12が豊富、そのため「増血ビタミン」ともよばれ、貧血の方々に好んで用いられる食品です。
 
 

 
囗から摂取した食物は消化管内で機械的に、また化学的に分解されて吸収されます。一部のアルコールや食塩などは胃からも吸収されますが、分解された栄養素は体に必要なもののみが選択的に吸収されます。そこで吸収されないものは体外に排泄されます。消化されたものは小腸で吸収されます。
 

消 化 機械的 食物を細かくし、消化液と混和する。
脂肪は胆汁により乳化する。
化学的 膵液により蛋白質、脂質、糖質を加水分解する。

 
口から入った食物はまず機械的に消化されます。消化液とともに細かくしたり、すりつぶして混和し、脂質は水に溶けないため乳化剤の役割である胆汁で乳化され、化学的分解をしやすくします。
 
化学的消化は蛋白質をアミノ酸、糖質をブドウ糖、脂質を脂肪酸とグリセリンに分解させます。そのままでは吸収されることはありません。これらの消化を加水分解といいます。
 

口腔内での消化

食物を歯で細くしたり、すりつぶして唾液とよく混和させて胃に送られます。唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺などから一日約1.5リットル分泌され、その中にはムチンという粘調性の糖蛋白質を含んでいて食物を飲み込みやすいようにしています。
 

胃内での消化

胃に入った食物は胃液とともによく混ぜ合って、半流動性のドロドロの粥状になります。胃液には加水分解させる働きはありません。胃液のpHは1~2の塩酸です。
 
人間は胃液の恩恵を非常に多く受けています。それらをまとめてみると、
 
 ①摂取した蛋白質を分解、消化する
 ②食物の殺菌や消毒
 ③胃の幽門括約筋の開閉調節や腸液、膵液、胆汁の分泌を促すホルモンを放出して、食物の消化、吸収を促進する。
 

小腸内での消化

胃と大腸の間にある長さ6mぐらいの管で、胃の次が小腸の最上段です。十二指腸、空腸、回腸の三部分か小腸で、その次が大腸です。十二指腸には胆のうから胆管と、膵臓からの膵管が出口近くで一緒になって開口しています。また小腸粘膜には多くの腸腺があり、腸液が分泌されます。胃から送られてきた食物は酸性ですが、胆汁や膵液はアルカリ性であるため食物はアルカリ性になります。ここで殆んどすべての栄養素は分解され、完全に消化され、そして吸収されます。
 

大腸内の消化

小腸より太く、盲腸、結腸(上行結腸、横行結腸。下行結腸の三部門よりなる)直腸に分けられ、食物の終末部分です。大腸液はムチンを含み、弱アルカリ性で消化酵素は含まれていません。小腸が栄養素の吸収なら、大腸は水分の吸収であり、糞を作りあげる役目が大腸です。大腸には大腸菌を始め、多くの非病原性の微生物が繁殖していますが、これらの微生物は小腸で吸収されなかった繊維などを分解します。また蛋白質の浅渣からはインドール、スカトール、硫化水素などが作られ、特有の臭いを発生させます。
 
 

 
健康な状態を維持できるか否かは、毎日摂り続けている食事のとり方に一にも二にも関係しています。摂取した食物は体内で分解、合成され、生命活動を維持しています。食物からアミノ酸、ブドウ糖、脂肪酸を合成してエネルギーを出しています。それにより人間はさまざまな活動を営むことができます。食物すべてが生命である所以であり、それにより健康的な身体が築きあげられることから、食と健康は車の両輪であり切り離すことはできません。
 
食品の中の栄養素である水、ミネラル、ビタミンのような低分子は消化されず、そのままの形で吸収されます。糖質、脂質、蛋白質の高分子は、低分子の物質に分解され吸収されます。蛋白質は加水分解されてアミノ酸になり吸収され、門脈を経て肝臓に入ります。アレルギーなどを起こす特殊な蛋白質は完全に分解されずに吸収された結果でありましょう。糖質はブドウ糖(グルコース、テキストローズ)のような単糖類にまで加水分解され、吸収されて門脈を経て肝臓に入ります。
 
脂質は脂肪酸とグリセリンにならなければ吸収されません。それを分解するのはリパーゼという酵素で膵臓から産生されます。
 
肝臓で作られた胆汁には消化酵素はありません。その中に含まれている胆汁酸によって脂質を乳化し、酵素が働きやすいようにし、脂質の消化吸収が促進されます。
 
脂質は少量の蛋白質と結合してカイロミクロンといわれる微細粒子となり、リンパ管を通って直接血液中に入るコースと、水溶性になった脂肪酸とグリセリンが門脈に吸収され、肝臓に入るコースとがあります。
 
 

 

栄養のバランスにより起こる病気

 

①栄養不足

蛋白質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、水などの摂取が不足すると栄養失調になります。この栄養失調という状態は、戦後、食物が不足し、満足に食べることもできなかった時代に見られましたが、今はほとんど日本においては見ることがありません。栄養不足というより、栄養物供給の減少でしょう。これが進むと飢餓(きが)になります。飢餓には絶対飢餓と部分飢餓とがあります。栄養物が全く供給されない場合を絶対飢餓といいますが、この場合は体重が減少し、大体三週間で死亡します。しかし、水分のみを与えると約二ヵ月間生存することができます。
 
部分飢餓とは栄養物の一部に不足が生じると、不足した栄養素の障害が起こります。たとえば、ビタミンの不足はビタミン欠乏症、鉄の不足は貧血を起こします。
 
栄養不足は栄養素が完全に満たされていない片寄った食事を一定の期間続けた時に起こる病気で、栄養素が欠乏したり、体を維持するために不足すると、新陳代謝機能が正常に働かなくなり、病気が発生してきます。栄養素が何日間欠乏したら病気になるかということは、栄養素により差があります。たとえば、ビタミンAの場合、体内で貯蔵されている量が多いため欠乏期間は長く、貯蔵されにくいビタミンB1やアミノ酸は短いのです。
 

②ビタミン欠乏症

体の中でエネルギーに利用されるのを早めたり、スローダウンさせたりする調節を行なうのがビタミンと無機質です。その内の代表的なものについて説明しましょう。
 
ビタミンには10種類程がありますが、その中には水のみに溶けるもの(水溶性)と、油にしか溶けない(脂溶性)の二種類があります。脂溶性にはA、D、E、水溶性にはB、Cがあります。
 
ビタミン欠乏症は強い障害を現わしますが、ビタミン過剰症はあまり聞きません。普通の食事をしていればビタミンが欠乏したり、過剰になることはありません。ビタミンが過剰になったからといって、その障害は認められていません。過剰なビタミンは体内に蓄積されることはなく、破壊されて排泄されます。
 
アメリカのポーリング博士はビタミンCの大量摂取をすすめています。一日1.0gのビタミンを摂ると病気の治癒、予防に強い効果があると主張していますが、この説に反論している人もいます。私は事あるごとに旬の野菜、果物をもっと大切にしなければならないと言っていますが、旬の物と人工栽培とでは成分的に大きな差があります。その例として、女子栄養大学の吉田先生は、夏のほうれん草は、旬となる冬のほうれん草と比べて、1/3~1/5にまでビタミンCの量が減っているといっています。
 
このように野菜のビタミンCが変化していることについて吉田先生は、新しい品種が開発されたことや、栽培方法の変化が影響されているのではないかと言っています。
 
このようにビタミンC一つを例にとってもわかるように、畑で完熟させることがビタミンやミネラルをより豊富に貯える結果となります。ビタミンCが多いといわれていた野菜には、結局ビタミンCの含有量が少なくなっています。ビタミン不足が病人を作る潜在にもなっています。
 

③ミネラル欠乏症

ミネラルの中でも特に不足しがちなものはなんといってもカルシウムでしょう。社会問題にもなろうとしている骨粗しょう症、その原因はカルシウム不足ですが、このカルシウムは重要な陽イオン元素の一つです。身体には約一㎏含まれていますが、そのうち99%は骨および歯に存在しています。残りは血液中や体液に含まれています。
 
カルシウムは重要な生理作用を営んでいます。①骨を作る、②筋肉の収縮運動になくてはならない、③神経が正常に働くために必要不可欠、④血液凝固などです。カルシウムはビタミンDの働きによって小腸から吸収されますが、上皮小体ホルモン(副甲状腺)によって平衡を保っています。
 
骨が破壊されると古い骨が吸収され、新しい骨に置き換わります。骨が新しくできると、正常な状態では吸収される量と形成される量のバランスが保たれ、骨は常に吸収、形成をくり返しています。
 
特に日本でカルシウムが問題になっているのは、日本を作っている土に影響されています。日本はもともと火山国であるため火山灰ですが、その火山灰にはカルシウム量が少ないわけです。それによって作られる野菜もカルシウム量が少なく、カルシウムの摂取には気を配らなければなりません。
 
食事で1000mgのカルシウムが入ると、吸収されるのは300mg、その大部分は骨に吸収されます。その分だけ古いカルシウムが捨てられます。腸で吸収されなかった700mgは糞便とともに排泄されます。
 
カルシウムは燐酸カルシウムか炭酸カルシウムで吸収に差があり、また人によっても差がでます。カルシウムは食べたからといってすべて吸収されるわけではないのです。
 
閉経後の女性に「骨粗しょう症」がなぜ多いのか、通常、女性ホルモンであるエストロゲンは、上皮小体(副甲状腺)ホルモンの働きに歯止めをかけ、骨からカルシウムが失なわれるのを防ぐ作用がありますが、しかし、閉経後(更年期以後)エストロゲンの分泌が減少するためカルシウムが失なわれ、骨が脆くスカスカになって弱くなります。
 
そのため女性特有の病気のようになっています。女性ホルモンはカルシウムを吸収し、骨に沈着させる働きがありますが、閉経後は女性ホルモンが少なくなることからその利点がなくなります。
 

④鉄欠乏性貧血

鉄(Fe)は成人の体内で大体5g程度と量的には少ないが、しかし、なくてはならない要素です。我々の血液が赤いのも鉄があるからこそです。血液の色が少し薄いと貧血しているのではと心配になりますが、その色度合により正常か異常かを決定します。酸素を多く取り入れた血液は真赤であり、酸素の少ない静脈血はどす黒い色をしています。血液中の鉄は酸素や炭酸ガスの交換に役割を果しています。鉄がなければこのような作用が少なくなり、それは血液本来の働きができないことを意味しています。

 
すなわち、それを貧血といいます。鉄が不足した状態を鉄欠乏性貧血とよんでいます。囗から入った鉄は小腸で吸収されますが、胃酸の少ない人は吸収が少なくなります。吸収された鉄は蛋白質と結合してフェリチンとなり貯蔵されます。
 

⑤栄養過剰(肥満症)

栄養過剰とは、蛋白質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミンなどの摂取するエネルギーが、全般的あるいは部分的な過剰あるいは過多をいいます。ここで問題にするのは全般的な過多よりも、部分的な過多状態です。これを「フードエラー」「食べそこない」ともよんでいますが、それによる肥りすぎ(肥満)による弊害も多く見られます。
 
このように栄養過剰に由来する病気が増えて、がん、糖尿病、高血圧、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝など多く見られます。栄養過剰、特に脂肪の摂り過ぎは、ガンを誘発すると栄養過剰説を主張する研究者もいます。
 
 

 
米、麦、芋類など糖質を含む食物が多いが、これをわれわれは毎日摂取しています。この糖質は腸においてブドウ糖(グルコース、単糖類)に加水分解されて吸収されます。ブドウ糖はグリコーゲン(多糖類)となって肝臓や筋肉に貯蔵されます。糖質の摂取ができなくても体内において脂質や蛋白質からグリコーゲンが合成されます。グリコーゲンが利用される時はブドウ糖となって利用されます。
 
飽食の時代といわれる今日、過剰栄養となり、体内においてブドウ糖がだぶついてきています。そのため糖尿病患者が増加し国民病となりつつあります。この糖質が体内でバランスよく調節されるのが理想です。その理想的なブドウ糖は約100mg/dLです。もちろん食後に血糖量は増加しますが、二~三時間後には正常に戻ります。運動後、空腹時には血糖値が減少します。血糖が180mg/dL以上になると尿に糖が排泄されるようになりますが、このような状態を糖尿病といっています。
 
血糖調節は高ければ下げ、低ければ上げるというような働きがあり、これは体の中でも代表的な恒常性です。その調節は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量で血糖のバランスを保っています。血糖が多ければ筋肉や肝臓内でグリコーゲンが多く作られ、その上、インスリンの分泌量が増してブドウ糖の消費を助けるとともに蛋白質や脂質からのグリコーゲンの合成を減少させます。インスリンは膵臓のラングルハンス島にあるβ細胞より分泌されるホルモンです。
 
このラングルハンス島は膵臓の中で重さにして2g前後しかなく、その中にα、β、γの三つがあり、その中のβ細胞から産生されるホルモンです。
 
糖尿病はギリシヤ語で「甘い味が流れ出る」という意味で、尿中に多くの糖や栄養分が含まれ甘ずっぱい香りがするということを表わしています。糖尿病の始まりは多飲、多食、多尿が現われてきます。この糖尿病を治すには食事療法と運動療法しかありません。糖尿病自体はあまり気にかけることはありませんが、糖尿病に合併する病気が恐しいことから一刻も早く治療する必要があります。糖尿病に随伴する病気は、手足のしびれ、神経痛、眼底出血、網膜剥離、壊疽、尿毒症などです。
 
 

 
子供を持つ親の間ではアトピーは日常的な言葉になっていて、その意味は問題にされていません。そもそもアトピーという言葉はギリシャ語で「わからない」「むずかしい」「奇妙な」という意味らしく、このアトピーという言葉は1925年頃、アメリカ人のコカ博士が皮膚にできる原因のわからない皮膚炎や湿疹に使ったのが初めのようです。
 
アレルギー性鼻炎、ぜんそく、花粉症、じんましん、アトピー性皮膚炎などは、なりやすい体質もあるようですが、その原因は非常に多く、一つや二つの原因では起こりません。だから治りにくいことにもつながります。原因が二つであったとしても、皮膚炎の現われ方が同じではありません。また、その上、ストレスなども影響するのではという説もあります。
 
一般的に非常に避けにくい、避けられないものがアトピーを起こしていることから、治療も大変むずかしくなります。米、麦、大豆、卵、乳、ダユ、カビの発生、カーペットの埃、その他のハウスダスト、ペットのフケなど、アトピー性皮膚炎が起こる材料は多くあります。
 
これらの食物や吸入する家の埃などに異常に過敏な反応を示し、熱、寒さ、湿度、外傷、精神緊張、感染などのストレスにより免疫、自律神経、内分泌の異常を訴えるのを特徴としています。アトピー性皮膚炎は特に乳児、幼児に多く見られますが、成人のアトピーも増えています。
 
乳児、幼児は顔面、頭部に湿潤性の湿疹が現われ、頬に紅斑、水がたまったような丘疹があり、顔全体に拡がって、湿閠、結痂します。子供の時は「かゆい」ので掻き、そのため出血し見るからにいたいたしい姿になります。乳児や幼児が食べる牛乳、卵、大豆、米などすべてが抗原になり、アトピーを起こしているのが現状です。病院で何か悪いのか、その原因物質をチェックできるようになっています。
 
 

 
ヒポクラテスの時代から病気の治療には栄養が絶対的な因子であるとさけばれています。その後、病気の治療、健康をとり戻すための栄養、ホメオスターシス(恒常性)の維持のための栄養など、健康を守るためには必要欠くべからざるものです。
 
現在、医学が進みほとんどの病気が治ることが可能になりましたが、やはり健全な身体を作ることは食としての栄養しかありません。食文化が向上した反面、その落し子とも云うべき栄養失調が多く生まれています。そのような人々は自然治癒が極めて弱く、不可解な病気が発生してくるのが現状です。
 
自己免疫、急性慢性疾患、移植免疫、感染免疫、免疫異常、がん免疫、エイズなどの免疫現象の解明が進歩してきていますが、合わせて免疫学が健康体を作るのに非常に重要な学問であることがわかってきました。要するに免疫が体内で完全に成立しなければ健康な体を築きあげることができないということです。それは完全な栄養を食することにより、完全な免疫が成り立ち、それにより病気から体を守る健康体ができることになります。
 
病原体であれ、有害物、毒物であれ、それらをはじくような体であれば病気は起こりません。すなわち自然治癒力が備っていれば病気にならないということです。
 
栄養が不足し低栄養状態である場合、さまざまな感染症にかかりやすくなり死亡することが多くなります。難民生活を余儀無くされている人々や、開発の遅れによる食料不足など悲惨な生活を送られている人々をテレビや新聞で見ての通りです。それ程、栄養は自然治癒力をつける根源なのです。自然治癒力をつけることは、すなわち生体防衛能力をつけることになります。体内に侵入してくる異物を排除しうる能力を体が保持していることになります。
 
 

 

①ストレスをつくらない

がんになりやすいか、なりにくいかはちょっとした事で決まる、それも人によって大きな差があるようです。これは京都大学の内田温士先生の報告を朝日新聞が伝えたものです。それによると、がん細胞を初期に殺す主力のナチュラルキラー(NK)活性を測定したところ、ある人ではサウナで二倍に上昇したのに、別の人では1/4に落ち、プラスマイナス一桁近い差を生んでいます。
 
また、適度なスポーツであればNK活性は上がるが、強すぎたり、心理的な負担がかかる競技だと下がるということです。内田先生は実験を進め、NK活性プラスアルファーの免疫力を用いて測定したところ、がんを殺す免疫力のある人はがんの再発も転移もなかったが、しかし、がんを殺す免疫力のない人は二年以内に100%再発しているということです。
 
この免疫力のない人に対し免疫強化療法を試みたところ、半数ほど「あり」に誘導できたということです。この免疫力がある人でも、人によりがんになることがあります。これはなぜなのでしょう。内田先生は、ストレスや体調の谷間で免疫力が落ちた時などにがんが増殖してしまうのだと推測しています。特に体調の悪い時、ストレスの強い時など、ちょっとした身心の油断に付け込むのががんであることから、身心ともどものゆとりが病気を起こさせない秘訣のようです。
 
ストレスとがんの関係が大きく取りあげられる時代となりましたが、ストレスが原因で起こる有名な病気、ストレス胃潰瘍があります。ストレスは胃に穴が開いてしまうほど恐しいものなのです。ストレスはもともと物理学で用いられていた「物件のひずみ」という意味でしたが、セリエ先生がそれを生物学に応用し「生体の中に生じたひずみ」をストレスとよんだのが始まりです。ストレスが増すと副腎皮質ホルモンの分泌が増加します。その結果、体内代謝が高まるため、蛋白質、各種ビタミン、カルシウム、マグネシウムの消費が多くなり、そのため体力が消耗し病気にかかりやすくなります。


②焼き焦げの魚と肉

魚や肉などの焼き焦げは香ばしくおいしいものですが、この焼き焦げた部分ががんを引き起こします。
 
すなわち発がん性物質となることがわかっています。焦がした魚を一匹や2匹食べたからといって、すぐにがんができるとは限りませんが、焦げた魚や肉、言い替えれば焦げた蛋白質はがんを起こさせようとする発起人であるのです。少し食べたからと言ってあまり心配も恐れもする必要がありませんが、食生活の上では危険なものは避けた方が健全であると言えます。
 

③脂肪の摂りすぎ

毎日の健康を気ずかいながらも食卓にのぼる肉料理の回数が増えています。それに伴い油を使用する量も当然ながら多くなっています。揚げたあられやスナック菓子など、油を使ったものが好まれているようです。
 
厚生労働省の統計を見ると、乳がんや大腸がんが増えています。そのうちでも胃がんがトップを占めていて、肺がん、大腸がん、乳がんと続きます(2013年部位別がん罹患数。男女合計値)。
 
脂肪のとり過ぎは乳がんを増加させる傾向が強いという資料が多くあります。アメリカや中国では大大的に食事と乳がんの関係を調べています。
 
脂肪をたくさん摂っている人や、多くの脂肪を摂る国ほど乳がんの患者が増えています。最近になって日本も欧米並の脂肪の取り方になったとたん、乳がんも欧米並に増加してきました。その原因は今のところ明らかではありませんが、過剰に栄養をとるとがんの出発点、これをイニシエーターといいますが、その出発点に立つのであろうと考えられます。
 
元国立がんセンターの平山雄博士は、初経の早い女性ほど乳がんになる率が多いことをまとめています。
 
すなわち早熟な人ほど乳がんが多くなっているということです。女性ホルモンが多い人で、その上、脂肪の摂取量が多い人ほど乳がんの発生が多くなっています。このように乳がんと脂肪は密接な関係があります。それと同様に女性ホルモンの多い人は子宮がんとの関わりもでてきています。脂肪の摂り過ぎの人とホルモン量の多い人ほど子宮がんの発生が見られるという結果が出ています。
 
体内に入った脂肪を消化させるためには胆汁の力をかりなければなりません。脂肪の摂取量が増えてくると、それにつれて胆汁の量も増加します。この量が増加すると乳がんにならなくても大腸がんになりやすくなります。
 
こうりう点からも脂肪分の多い食べものはほどほどに心がけ、繊維質の多い食事を取るような工夫が必要です。繊維質は最近すっかり見直されています。繊維質が少ない食事であれば当然便の量も少なく、便が大腸に止まる時間も長くなります。止まる時間が長くなると、便に含まれている発がん物質や、腸でできた発がん物質に長時間さらされることになり、その結果、がんが発生しやすくなります。脂肪の一日の必要量は約50グラムです。
 

④食塩

しょう油、みそ、佃煮、加工食品などに至るまで、減塩を心がけているという人が多くなりました。塩そのものには発がん性はありませんが、がんを起こす手助けをしたり、がんを起こす下地を作る材料にはなります。日本では男女とも胃がんが多くトップを占めていますが、日本の胃がんの歴史は古く、いろいろな研究者がその原因について述べています。たとえば、熱いものを飲んだり食べたりするとか、酒の飲み過ぎ、塩からいものの取り過ぎ、わらび、ぜんまいなど山菜の取り過ぎなどを原因としています。
 
胃酸のpHは1~2で、これは骨でも簡単に溶かします。胃内に食べた物がなければ胃袋でも溶かします。この状態を胃潰瘍といいますが、潰瘍にならないために胃袋が粘液を出して胃を守ります。ところが、塩辛いものを食べると、この粘液の働きを弱めます。粘液の働きが弱まったところに、熱い食べものなどが入り、胃袋を刺激して胃がんの下地を作ります。
 
塩辛い食べ物は胃がんを作る下地のみでなく、高血圧の予備軍を作ったり、動脈硬化を作ります。減塩が叫ばれるようになったお陰で、脳卒中や脳出血、心筋硬塞が減少したのも事実です。塩分の多い食事をすると血圧が高くなりますが、逆に塩分の少ない食事をすれば血圧が5~10下がるといいます。
 

⑤添加物に注意しましょう

食品を長く保存するために、また、おいしそうに見せるために添加剤を加えて、色、形などを加工します。添加物は厚生労働省が許可したもののみしか添加することができませんが、それでも常時、多く摂ると発がん性が出たりする不安材料もあります。また、着色料に用いた色素が体内にあるだけで喘息を起こす可能性も指摘されている今日です。
 
種々多様な添加物が使われている現在、体内に一つの添加物が単独で入った時には全く害作用のないものでも、他の物質が混じり合った時に害作用を現わすものもあることから注意が必要です。この問題については今後クローズアップされる重要なポイントになるでしょう。加工食品のパッケージにはどんな材料か、添加物は何かを表示しています。その添加物には保存料、着色料、甘味料、品質保持剤、酸化防止剤など、さまざまな化学名で、時には物質名で表示されていますので注意してチェックする必要があります。
 
おいしそうな色をつける着色料には、赤色、黄色、緑色、青色、などと多いが、一種類の色素では害を起こしたり、がんの引き金となることがなくても、それに保存料や酸化防止剤あるいは防かび剤の一つか二つが混合した場合も安全であるのかという事については、厚生労働省も、世界中の研究者も現段階ではわかりません。このような点に気がついたのはほんの最近の問題であり、何百種類もの化学的合成品の組み合わせによる解明は200~300年先の事でしょう。多くの加工食品が氾濫しているこの時世において、われわれの身近にある加工食品を選択するのは困難かも知れませんが、要は添加物を加えた加工品や材料にたよらずに、新鮮な材料、手の加えられていない材料を上手に選ぶことが大切です。
 
 

 
がんを引き起こさせるような危険な物質は活性酸素という姿に変え、がんの遺伝子に直接作用してがんを芽生えさせるのです。われわれ誰れしもが、がんになる危険因子を一つや二つ持っているのが普通です。がんになるか、ならないかの別れ道は、体内に入り込んだ発がん物質が活性酸素に作用して目をさまさせ、働かすからです。
 
朝日新聞紙上で、国立がんセンターと産業医科大学の共同研究による結果を報告していますが、この活性酸素を人間の研究で突き止めたということを報告しています。
 
活性酸素ががん抑制遺伝子に突然変異を起こさせ、発がんの引き金になっている事を人体組織で初めて明らかにしています。これまで活性酸素の発がんへの関与は動物実験での研究でありましたが、人体組織では初めてでありましょう。
 
活性酸素とはどんなものかといえば、発がん物質である薬、放射線、ホルモン栄養などによって不安定な状態になった酸素のことです。このように不安定になった酸素は、普通の酸素より非常に変化しやすく、また他の物質と結びつきやすくなり、その結果、いろいろな障害を起こします。その第一の例ががんを作ること、第二の例が老化に導くことです。
 
人間はだれもが老化をむかえなければなりません。「老化とは治ることのない病気のようなもの」といわれ、人間の手のほどこす術すらない今日、この活性酸素の活動をストップさせることができたら100才を起す長寿になることも期待できそうです。
 
 

 
毎日食べている食品を組み合わせることによりがんを予防できたら、こんなすばらしいことはありません。そのような事が可能なものであるかどうかを調べようという案がアメリカでもちあがりました。それは「デザイナーフーズ」計画といわれるものです。これまで、がんに効果があるらしいといわれてきたいくつかの野菜の名前をあげて実行にとりかかりました。その中には、ニンニク、カンゾウ、かんきつ類、アブラナ科(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)、セリ科(ニンジン)、大豆などが含まれています(しかしながらデザイナーフーズ計画はその後中止となりました)。
 
要は、がんになりにくい体を築きあげることが最も大切なことです。そのためにはバランスのとれた食生活が何よりも大切です。
 

 
身の回りの食品をみてみると、見栄えを良くするための加工、日持ちを長くするため加工などと手を加えすぎる結果、いろいろな発がん物質、あるいは発がん促進物質が入ってしまいます。その結果、多くのがん患者がうまれるわけです。
 
緑黄色野菜に含まれるカロチン、特にβ-カロチンはがんの発生や増殖を防ぐことがわかり現在注目されています。この代表的な緑黄色野菜は、にんじん、かぼちゃ。ほうれん草などがありますが、このβ-カロチンは体内に入ると一部はビタミンAになり、残りはカロチンのままストックされます。ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けることができますが、ビタミンAは代表的な脂溶性ビタミンです。このβ-カロチンはがんにならないように働くといわれていますが、事実、緑黄色野菜を毎日好んで摂っている人には、がんの発生が少ないことが証明されています。
 
そのがんも特殊ながんではなく、普通にみとめられるがんです。
 
ところが最近、β-カロチンとビタミンEを毎日摂取しても発がんは抑えられず、β-カロチンは逆に肺がんを増やす恐れもあるという研究結果を、アメリカの国立がん研究所(NCI)と、フィンランド国立公衆衛生研究所が共同で発表しています。
 
この結果は各新聞紙上にて報告されましたが、三万人弱の高齢者で、しかも男性喫煙者を対象にビタミンEやβ-カロチンのカプセルを5~8年の長期間投与し、がん予防効果を追跡した結果わかったもので、β-カロチンを投与し続けたグループでは、そうでない喫煙者より肺がんの発症率が18%も高くなったといいます。考え方を変えれば、喫煙がカロチンを発がん性にもっていくのかも知れません。非喫煙の人であればカロチンは抗がん性になるのではなかろうかと私は考えています。
 
黄色の色素を含んでいる野菜の中にはケセルチンという物質が存在しますが、この物質ががんを起こしやすいという研究報告が新聞紙上に載りましたが、一方では、がんを抑制するという報告もありますので、今後の研究結果を楽しみに待ちたいと思います。
 

■ビタミンCを多く含む食品

 パセリ、ブロッコリー、キャベツ、さやえんどう、ほうれん草、キーウィフルーツ、いちご、レモン、グレープフルーツ
 

■ビタミンEを多く含む食品

 かぼちや、さつまいも、ほうれん草、大豆、卵、うなぎのかば焼き、たらこ、アーモンド、落花生、ピスタチオ、植物油(綿実油、サフラワー油、コーン油、べに花油)
 
京都大学の小清水弘一先生が日本がん学会で、野菜や果物でがんが防げると発表し、がんを抑える効果のある食べ物は、ズイキ、ナタネ、カリフラワー、パセリ、ギンナン、クルミ、アボカド、アズキ、バナナなど一四種類であったと報告しています。
 
金沢大学、京都府立医大、京大などの研究で、がんが防げる食品であると実験的に証明したものは、しょうが、緑黄色野菜、ほんしめじ、黒ゴマ、緑茶などです。
 
アメリカのジョンズーホプキンス大学のタラレイ先生のグループは、ブロッコリーだけでなく、キャベツ、芽キャベツ、カリフラワーなどの緑黄色野菜にも制がん作用があり、その原因物資を確認しています。この報告について、ミネソタ大学内科教授のワッテンベルグ先生は、がん予防薬の開発につながる可能性が秘められているとコメントしています。
 

日本人の死亡原因の第一位はがんですが、そのがんの部位別をみると、男性の筆頭が胃がん、次が肺がん、次が肝がんでしたが、平成五年度の統計資料では胃がんが後退し、第一位が肺がんになりました。女性の場合は同じで、第一位が胃がん、次が子宮がん、次が乳がんです。
 
ビタミンCががんを予防したり、がんの発生を抑えるという報告が各国から寄せられています。がんを抑えるに有効なビタミンCはどのような働きがあるのか、それを三つにまとめてみました。
 

①発がん性物質の抑制

肉や魚、卵などを食べている以上、体内でニトロソアミンが作られます。ニトロソアミンは発がん性が強い物質ですが、これを抑える働きがあります。
 

②体のリズムをよくする

一年経てば一才になるように、体を作りあげている細胞にも、若い細胞もあれば老いた細胞もあります。老いた細胞が多いということは病気にかかりやすくなります。ビタミンCは細胞の活性を高める働きがあります。
 

③若々しさを保つ

ビタミンCは各細胞の新陳代謝をよくし、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの成人病を抑えます。
 
ビタミンEほど騒がれたビタミンも他にはあまりありません。ビタミンEは美容ビタミン、不老ビタミン、抗酸化ビタミンなど、いろいろな別名があります。バランスのとれた食事を規則正しくしていればビタミンE欠乏による障害はありません。
 
しかし、ビタミンEが豊富に存在することにより、がんをやっつけるリンパ球が多くなり、またその攻撃力も増すという研究報告も最近見られるようになりました。今後の研究を待ちたいと思います。
 

 
葉酸は酵母、レバー、肉、卵黄、胚芽、牛乳、豆に含まれ、また、ほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれているビタミンの一種である葉酸は、胃がんを抑えるということを証明したのは、千葉大学の林豊先生です。
 
一般的に葉酸が体内で欠乏すると貧血、出血傾向、口内炎、下痢などがみられます。林先生によると、胃がんを起こさせる薬を入れた水を与えると同時に、普通の飼料を与えたグループと葉酸入りの餌を与えたグループにわけて観察していると、普通の餌を与えた場合は胃がんの発生は71%であったが、葉酸を加えた場合はマウス20匹中ただ一匹しか胃がんが発生しなかったといいます。
 
林先生は、ほうれん草やレバーなど葉酸の多い食品を毎日、多い目に摂ることにより、日本人に多い胃がんも予防が期待できると述べています。カロチンの多い緑黄色野菜ががんを抑える働きがあることは明らかになっていますが、葉酸にも同じ働きがあるということが確かめられたことになります。更にがん制圧のために緑黄色野菜を摂ることの必要性が生まれます。
 
 

 
最近、大腸がんが増加し続けています。食生活に脂肪が多く取り入れられると増加する傾向を示し、食物繊維の摂取を増やし脂肪を少なくすると大腸がんは減少することがわかっています。食物繊維は何の役にも立たない不用物質という考え方も一時期ありましたが、現在は体の保健維持のためになくてはならない重要
な成分として尊重されてきました。食物繊維が必要な理由は、体内に入った有害物質を、また体内でできた有害物質を繊維が取り込んで体外に出す働きをするからです。繊維は保健衛生上と病気予防のため体にとっては絶対不可欠な存在です。一口に食物繊維といっても二通りがあります。その一つは水に溶ける繊維。これを水溶性繊維といい、もう一つは水に溶けない繊維、これを不溶性繊維とよんでいます。
 
こんにゃくに含まれるマンナン、海草、いちごやりんごなどの果物に含まれている繊維は水溶性の繊維です。
 
一方、穀物や野菜に含まれている繊維は不溶性の繊維です。どちらの繊維も体内において優れた能力を発揮します。水溶性の繊維は胃や小腸、大腸の粘膜を保護し、不溶性の繊維は消化の助けとなる菌を増加させ、大腸にできた有害物質や発がん物質を取り込んで体外へ運び出す重要な役割を果します。また繊維はS状結腸や直腸での滞留時間を短くします。食物繊維を多く含むものには次のようなものがあります。
 
こんにゃく、里いも、さつまいも、じゃがいもなどのいも類を筆頭に、あずき、落花生、いんげん豆、納豆などの豆類、玄米、押し麦などの穀類。食卓にのぼる殆んどの野菜類や果物など、また、しいたけ、わかめ、ひじき、こんぶなどにも多くの繊維が含まれています。
 

 
がんの治療法には外科的にがんを取り除く外科療法、コバルトなどの放射線で焼き殺す放射線療法、薬を飲む化学療法、自然治癒力を高める免疫療法がありますが、たいていの場合、これらを組み合わせて治療しているのが実情です。
 
キノコに含まれている成分には化学療法で求められているほど強い抗がん作用はありません。体内の免疫力をアップする、すなわち自然治癒力が強くなるために、がんが増殖できなくなります。大きながん組織を包囲し、周囲からじわじわと働いて、がんを溶かしてしまう力を持つようにするのがキノコの持つパワーです。すなわち免疫療法です。
 
キノコといえばがんに効く、がんといえばキノコを思い起こすほど有名ですが、キノコががんに効くといい始めたのは2000年ほど前の中国です。キノコ類のなかで免疫力を高める力が強いのはサルノコシカケで、右に出るものはありません。シイタケ、マツタケにも弱いながら免疫力を高める作用があります(これはあくまでもキノコそのものを食べた場合の比較です。また、これらキノコ類をそのまま食べても、末期がんと闘えるほどの免疫強化は得られません)。
 
体の免疫力が低下するといろいろな病気を誘発してきます。たとえばエイズ、この病気の日本名は後天性免疫不全症候群といいますが、免疫が完全にできない病気です。免疫が正常でなければ体のリズムが不調に終ります。われわれの体は免疫が成り立っているからこそ健康な体が維持されるのです。
 
 

 
薬はクスリ、そのクスリを反対に読むとリスクとなりますが、リスクとは危ない、危険な事で薬を誤れば毒にもなり人を殺してしまう。薬の使い方がよければ病気を治してくれます。われわれが毎日食べているものも同じで、プラスの面とマイナスの面をもっています。
 
日本は火山灰でできた国であるためカルシウムが少なく、当然のことながらその土で作った野菜にも、飲料水にもカルシウムが少ないため、毎日の食生活の中から取り入れなければなりません。カルシウムは適度な運動とビタミンDを取らなければ吸収されません。しかし、カルシウムの吸収には個人差があります。摂取の仕方、運動状態、体格、体質、体調、精神的なコンディションによっても吸収量に差がでてきます。
 
カルシウムを多く摂っているだけでそれが体内で利用されなければ、そのカルシウムが引き金となって結石を作ったり、動脈硬化や高血圧の原因になります。
 
古代ローマの詩人ルクレティウスは「食べものは人によっては毒になることもある」という諺を残しています。
 
以前、朝日新聞が興味深い記事を載せていました。それは、食べ物や飲み物と相性の悪い薬もかなりあるという事柄です。その日に何を食べたかによって薬の効き目に差が生じるという内容です。チーズやワインの中にはチラミンという物質が含まれていますので、チーズやワインを摂った後に頭痛を起こす人がいます。
 
体に入ったチラミンは無毒にされますので心配はありませんが、ところが、うつ病の薬サフラジンや、抗結核剤のイソニアジドを飲むとチラミンを無毒にできないため、頭痛、血圧の上昇、脳出血を起こし、命にかかわる問題となります。
 
また心筋硬塞や脳血栓症の治療に使われるワルファリンは納豆とは犬猿の仲とされています。ワルファリンはビタミンKの働きを妨害し、血液を固まりにくくしますが、納豆菌は腸内でたくさんのビタミンKをつくるため、ワルファリンは効かなくなります。卵や肉など高蛋白食をたくさん摂ってから、ぜんそくの治療薬であるテオフィリンを飲むと効き目が落ちるといいます。逆に高血圧の治療薬であるプロプラノロールは、高蛋白食のあとで飲むと効き目が強くですぎてしまいます。
 
ほうれん草、キャベツ、みかん、すいかなどのアルカリ性の野菜や果物を摂った時は、不整脈の治療薬キュジンは中毒を起こすので注意しなければなりません。
 
ひじきや豆類などの食物繊維が多い食品を食べてから強心剤のジゴキシンを飲むと薬の効き目が落ちます。貧血で鉄剤を飲む時に、野菜やビタミンCの多い果物を摂ると鉄の吸収はよいのです。また反対に、牛乳や即席ラーメンを食べると吸収を妨げます。
 
解熱鎮痛剤のアスピリンを食後すぐに飲むと効き目が急速に落ちます。かぜ薬の中にはカフェインが含まれていますので、コーヒーといっしょに飲むと増幅されるのでイライラや頭痛が起こります。

アルコールは、睡眠薬や血糖降下剤を飲んでいる時には副作用がでるので酒は飲まないことです等を、報じています。
 
 

 
病を未然に防ぐ「未病医学」の考え方は中国、古代から考えられた食生活に対する哲学とでもいえましょう。これは毎日の食生活によって病気に負けない健康体を作ることです。今、私が問題にしている自然治癒力を高める栄養学と考え方は同じでありましょう。この薬膳には、食事により病気を防ぐ体を築きあげる「食養」と、病気を治そうとする「食療」がありますが、問題にしているのは食養の方です。
 
元気で長生きしたいという人々の願望から生まれた中国独特の料理で非常に長い歴史をもっています。中国五千年の伝統が築きあげた健康料理、これが薬膳食なのです。薬膳食には長寿のために、老人のため、女性のため、強壮強精のために等、それぞれの状態に合わせ、病気の予防や治療の目的に応じて何種もの材料を組み合わせ調理したもので、色、香、味、形の完成されたおいしい料理を薬膳料理といっています。
 
健やかに生きるための食生活とは健康の維持だけではなく、健康を増進させなければならないというのが薬膳食の基本的な考え方です。このためには食事、運動、休養のバランスが重要であると説いています。
 
 

 
われわれ人間はすべて、恒常性を維持して「より安心」、「より健康」を得たいと願う本能をもっています。しかし、体に及ぼしたり、与える影響は多大すぎて自己の生理反応能力以上か、あるいは自己の恒常性の範囲が狭くなって対応しきれなくなったかのようなトラブルが続発し、警鐘の如き不安定な病気が次から次へと浮上しています。これらを振り返って原点から眺めてみたい。それは食生活の誤りが大きな原因であると結論ずけました。
 
食事にはなるべく多くの種類を取り入れ、それらより栄養成分を吸収しなければなりません。「少品種大食」ではなく「多品種少食」を心がけなければなりません。良く噛んで食べるということは、唾液の分泌を増して消化を助けると共に、噛むことにより神経の働きが活発になったり、血液循環がよくなるなどのメリットも大きく、二次的、三次的な効果も生まれてきます。
 
自然治癒力が備わるという事は、すなわち完全な肉体であるという事で、主要成分の一つも欠けることは許されません。それを補う完全なものが栄養学です。
 

出典:関西女子短期大学教授・医学博士 永井勝次