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T細胞(Tリンパ球)とは

難病末期癌からの生還区切り線

陸上に存在する多くの敵に対処するためにつくられた

 
T細胞は、リンパ球の70%を占める免疫細胞だ。いろいろな免疫反応に参加し、免疫システムの主役を務めている。
 

T細胞はハーブの香りがする胸腺で育つ

 
骨髄では、すべての血液細胞のもとになる幹細胞という細胞がつくられています。この幹細胞が骨髄を巣立ち、胸腺へ流れて分裂、増殖すると、T細胞になります(胸腺に入らず、肝臓や腸で成熟するT細胞もあるといわれる)。
 
T細胞の「T」は、胸腺=thymusの頭文字。フランス料理の食材にもなる仔牛の胸腺は、タイムというハーブの香りによく似ています。そこで、胸腺がthymusと名づけられました。
 
進化の過程でみると、胸腺がはっきりしてくるのは両生類になってから。約4億年前に海から陸に上がった生物、すなわち両生類は、それまでとは比較にならないほど多くの外敵(抗原)に立ち向かう必要が生じました。そこで胸腺を発達させ、外来抗原を排除して自己を守るしくみをつくったと考えられます。それがT細胞です。T細胞はリンパ球の一種であることから、Tリンパ球とも呼ばれています。
 

敵を探索するアンテナをもっている

 
T細胞は胸腺で教育を受け、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞の3タイプに機能が分かれます。1960年代まで、T細胞は1種類だと考えられていました。というのも、免疫細胞はどれも見た目がそっくりで区別しにくいのです。
 
その後、機能分化していることが判明。識別するのに便利な印はないかと探したところ、細胞表面にあるタンパク質分子が利用できることがわかりました。
 
キラー細胞の「CD8」、ヘルパーT細胞の「CD4」がその分子です。が、これらは単なる標識ではありませんでした。ウィルス感染やガン化した細胞、つまり非自己細胞を認識するために重要な役割を果たしていることがわかったのです。
 
T細胞の表面にはもうひとつ、「TCR」と呼ばれるレセプター(受容体)があります。TCRも、非自己を探索するアンテナのようなもの。T細胞がTCRを発現する場も胸腺のなかです。T細胞はCD8やCD4、そしてTCRを使って、自己と非自己を正しく見分けているのです。
 
ところで、もうひとつのリンパ球・B細胞も、幹細胞からつくられる免疫細胞です。ある幹細胞がT細胞になるか、B細胞になるかはどのように決まると思いますか。遺伝子にプログラムされている? いいえ、答えは「偶然」。たまたま胸腺に流れついたものが、T細胞になったにすぎません。胸腺でキラーT細胞に分化するか、ヘルパーやサプレッサーに分化するかも、そのときの内部環境に左右されるといいます。免疫には結構あいまいな部分もあるのです。
 


 

3つのT細胞

T細胞は殺し屋、司令官、火消し役の3人組

 
T細胞はキラー、ヘルパー、サプレッサーに機能分化している。この3つの免疫細胞の連携プレーによって、侵害された細胞は排除されるのだ。
 

キラーはヘルパーの差し入れで目覚める

 
英語のkillerを名前の由来とするキラーT細胞は、まさに殺し屋。ウィルスに感染したりガン化してしまった細胞、すなわち非自己の細胞を探し出し、抹殺する免疫細胞です。しかし、キラーT細胞は自分勝手に殺しを実行するわけではありません。ふだんは眠りながら血中を漂っていて、司令官からの命令を受けたときにはじめて行動を開始します。
 
その司令官役がヘルパーT細胞です。ヘルパーT細胞は、インターロイキンという物質を分泌。インターロイキンは、馬の尻を叩くムチのようなもの。喝を入れられて目覚めたキラーT細胞は、作用を活性化するのです。またヘルパーT細胞は、もうひとつのリンパ球であるB細胞にも物質を発射し、抗体の合成を促しています。
 
そして、キラーT細胞やヘルパーT細胞などが暴走しないように、歯止めをかけるのがサプレッサーT細胞。免疫系が過剰に反応すると、正常な自己の細胞が傷つく危険があるからです。
 

ウィルスはこうやって退治される

 
ウィルスに感染した場合を例にとり、3つのT細胞の働きをもう少し詳しく見てみましょう。
 
まず体に侵入したウィルスは、マクロファージという免疫細胞が発見。食べて処理すると同時に、処理断片を細胞の表面に提示します。
 
ヘルパーT細胞はそれに気づくと、インターロイキンを合成して、眠っているキラーT細胞に向けて発射。これを活性させます。
 
活動を開始したキラーT細胞は分裂、増殖。仲間を増やしながら、ウィルスに感染した細胞を探します。そして感染細胞を発見したら、それに結合。細胞膜に次々と穴をあけ、タンパク質分解酵素(グランザイムなど)を撃ち込んで、内部で増殖していたウィルスも、細胞そのものも殺してしまうのです。
 
感染細胞に対する一連の排除作戦が終わると、今度はサプレッサーT細胞の出番。それ以上、過剰な反応が続かないようにブレーキをかけて、免疫反応は平静な状態に戻ります。
 
ヘルパーT細胞は、マクロファージがいなければウィルスの侵入に気づきません。キラーT細胞は、ヘルパーT細胞からの指令がなければ動けません。このように、免疫細胞の一糸乱れぬチームプレーによって成り立つシステム、それが免疫です。
 
この連携を寸断してしまう病気があります。エイズです。エイズウィルスは、マクロファージとヘルパーT細胞に感染。システムが破壊されるので、免疫力が急激に低下し、感染症にかかりやすくなるのです。
 


 

ヘルパーT細胞とHLA抗原

 

ヘルパーT細胞と抗原の出会いの一幕

 
反応が起きるときには、何らかのきつかけが不可欠。ヘルパーT細胞の場合は、マクロファージの「手」を見て反応がはじまる。
 

精子が他人の体に入っていけるワケ

 
リンパ球が関わる免疫反応は、マクロファージとヘルパーT細胞の出会いがなければはじまりません。両者がコンタクトするときに重要な役割を果たすのが、HLA抗原と呼ばれるものです。
 
HLA抗原は、すべての細胞についている「私の細胞であることの印」。マクロファージを含めてほとんどの細胞には、HLA抗原がついています。この印になんの変化もなければ、ヘルパーT細胞は知らん顔で素通りします。
 
しかしウィルスや細菌などの抗原が入ってくると、マクロファージが食作用でバラバラに切断。かけらをHLA抗原にのせて、「こんなものが入ってきたよ!」とアピールします。ヘルパーT細胞がこれに気づいて、各方面(キラーT細胞やB細胞)に指令を発すると、免疫反応がはじまるわけです。
 
ひとりひとり指紋が違うように、HLA抗原という印も違います。他人の臓器を移植したときに拒絶反応が起きるのは、印の違いを免疫細胞が見逃さないからです。
 
液性の成分、たとえば血漿や粘膜、ホルモン、タンパクなどにはHLA抗原がついていません。精子が他人の体に入って拒絶されないのも、HLA抗原がついていないからです。
 
意図的にHLA抗原を隠してしまうヤツもいます。ガン細胞です。HLA抗原がなければ、ヘルパーT細胞は行動が起こせません。だからガン細胞は殺されずにどんどん増殖し、体を蝕んでいくのです。
 

個性の違いは絶滅を防ぐ手段

 
HLA抗原についてもう少し詳しく紹介しましょう。
 
HLA抗原には、クラスIとクラスIIという2種類があり、クラスIのほうはほとんどの細胞表面にあらわれています。
 
形は、螺旋状のリボンに似ています。この螺旋の巻き方が、人によって微妙に違うのです。
 
違いを決定しているのは遺伝子。HLA抗原は、父母の遺伝子から6種類ずつもらって構成されている遺伝子群なのです。各分子には複数の種類があって、その掛け合わせで各人のHLA抗原の形が決まります。だからバリエーションは数万パターン。固有性が非常に強いので、HLA抗原を検査すれば個人がほぼ特定できるのです。
 
HLA抗原がこれほど多様化したのは、約200万年前から。多様化することで個々の免疫反応に強弱をつけ、疫病や感染症による大量死ヽつまり種の絶滅の危機を防いだのではないかと考えられています。
 


 

サプレッサーT細胞

免疫反応の名ストッパー、その発見の舞台裏

 
アクセルを踏み続けたら事故が起きる。ブレーキが必要だ。T細胞のなかにもブレーキ役が存在し、免疫反応を調節している。
 

3つ目のT細胞が存在する?

 
サプレッサーT細胞の発見は、その少し前に見つかったヘルパーT細胞の働きを確認する実験のなかで実現しました。あらましはこうです。
 
生まれたばかりのラットから胸腺を取り除いた後、抗原を注射して、抗体のできかたを調べることになりました。胸腺を取れば、T細胞の数は減少します。もちろんヘルパーT細胞も少なくなるため、B細胞への指令がじゅうぶんに行なわれず、抗体の産生も低下するはずだと予想されたのです。
 
ところが結果は逆。ふつうのラットより抗体が産生されやすくなっただけでなく、産生能が落ちるはずの時期になっても分泌が止まらない。ブレーキがきかない状態になったのです。
 
そこで他のラットのT細胞を注射したところ、抗体の産生能が低下してきたのです。このことから、T細胞のなかにはキラーでもヘルパーでもない、抑制作用をもつ別の細胞が存在することが判明。それがサプレッサーT細胞です。ちなみにこの実験を行なったのは、多田富雄・現東大名誉教授と千葉大大学院時代の奥村康先生らのグループです。
 

ときにはリンパ球を殺すことも

 
サプレッサーT細胞の詳細が解明されはじめたのは、1970年代の後半以降。単にB細胞に作用して抗体の産生を抑えるだけではなく、他にもさまざまなテクニックをもつことがわかってきたのです。
 
サプレッサーT細胞は、場合によってはヘルパーT細胞にも作用を及ぼします。つまりヘルパーT細胞の活性を下げることによって、ヘルパーT細胞からB細胞への指令を抑制。結果的に、抗体の産生能を低下させるわけです。
 
またサプレッサーT細胞は、抗原がなんどもなんども侵入して強い免疫反応が起きると、登場してくるのではないかと考えられます。こうして出現したサプレッサーT細胞は、余計なヘルパーT細胞やB細胞にブレーキをかけたり、ときには殺傷したりして、免疫の過剰反応を抑えているようです。
 
さらに近年、新たな作用が明らかにされつつあります。サプレッサーT細胞は活性する前の眠っているリンパ球には手出しをせず、抗原の侵入などで活発になったリンパ球だけを狙って殺傷するという働きがあることがわかりました。
 
免疫系が自分の組織を破壊する病気、すなわち自己免疫疾患のなかには、このようなサプレッサーT細胞の働きが阻害された結果、起きるものが多いと考えられています。実際に、体内で産生されるサプレッサーT細胞の阻害物質についての研究が進行中です。
 

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