郵便、電話、Eメール……人間界の情報ツールは様々です。免疫界でも、機能が異なる数々の伝達アイテムを駆使し情報交換が行なわれています。
細胞同士は、サイトカインと総称される物質を使って情報のやりとりをしています。たとえば、インフルエンザウィルスが侵入したとしましょう。マクロファージは、ウィルスを食べて処理しようとします。が、それだけでは太刀打ちできないので、インターロイキン1(IL-1)という物質を産生。これがヘルパーT細胞に働き、ヘルパーT細胞が活性します。
一方のヘルパーT細胞は、マクロファージが細胞表面に提示したウィルスの断片を認識すると、γインターフェロンをつくります。これは、マクロファージの作用をさらに活性化する物質です。この場合のIL-1やγインターフェロンがサイトカインの一種。他に、リンパ球やマクロファージがつくる「TNF(腫瘍壊死因子)」、単球やマクロファージがつくる「モノカイン」など、40以上の種類があります。
サイトカインは、抗原を発見したり他の細胞からの刺激を受けるなど、何かのきっかけで急速に合成。放出されます。そしてそのサイトカインにあった受容体をもつ細胞が受け取り、刺激によってサイトカインを合成し放出する、という具合に反応が連鎖します。
カゼをひいたときに熱がでるのは、IL-1の作用です。IL-1はT細胞を活性すると同時に、脳の視床下部にある発熱中枢を刺激し、熱をだすのです。オリンピックの100m走で、スタートの合図を待つランナーたちの体内では、IL-1が大量に産生されるとか。IL-1は、極度の興奮状態になったときにもつくられるといいます。
このようにサイトカインの働きはとても多様です。ひとつのサイトカインが数種類の働きをすることもあれば(作用の多様性)、数種のサイトカインがひとつの細胞に同じ作用を及ばすこともあり(作用の重複性)、標的細胞によって作用をかえることもあります。
さらに、細胞を増殖させたり作用を活性化するものもあれば、逆に抑制させるものや、炎症を起こすものもあります。つまり、よい作用だけでなく、悪さもするのです。たとえば、インターロイキンは現在までに18種類が見つかっていますが、研究者も戸惑うほど変幻自在の働きをするのがIL-6です。B細胞に抗体を産生させる、血小板をつくって出血を止めるなどの作用の他、リウマチ、炎症や発熱、エイズ発病後に頻発するカポジ肉腫の発生などにも関与することがわかってきました。
IL-2やインターフェロンなど、ガン細胞の破壊に関与するサイトカインは、ガン免疫療法に用いられています。
- 「B細胞に抗体をつくらせる。発熱・炎症を起こす」
- 「リウマチを起こす。肝細胞を刺激する」
- 「血小板をつくる。骨を吸収する」
- 「悪液質に影響を及ぼす(悪液質とは、体重が減ったり頬が痩せこけたりする症状。重い病気で死期が近づいたときによく見られる)」
- 「ハイブリドーマ(融合細胞)を成長させる」
- 「カポジ肉腫の発生にかかわる」など