末期癌と闘われる方々への
希望や勇気となりますように

難病末期癌からの生還~タイトル画像小

HOME | 末期癌を招く原因と克服するために必要なものとは | 癌克服には「腸」の活性化・正常化が必須

命のベースは「腸」にあり

末期癌克服への架け橋区切り線

 

正しい食物の摂取

 
人間は腸をベースにして栄養を全身に吸収して生きています。樹木は土壌をベースにして栄養を吸収し、生命活動を続けているのです。腸は地面と同じだということです。
 
ですから、この土壌や腸の質が、植物や動物や人間が健康に生きられるか否かを大きく左右する因子となるのです。
 
そのくらい大きな因子ですから、食物の摂取法は、健康を維持するうえで重要と言うより絶対欠かせないものなのです。もちろん病気になってそれを治そうというときも、病気が治った後でも、健康を維持するするうえでも、予防のうえでも、とにかく食物の摂取の仕方は、非常に大切だと言うことです。
 
腸を活性化・正常化させる事で、栄養分の吸収も十分に出来るようになり、結果癌と闘うために必要な体力もついてきます。腸内腐敗も少なくなり、新たな発癌因子が減少する事にもなります。免疫強化物質などを飲むにしても、腸から吸収されないと免疫活性が起きない訳ですから、腸の働きひとつで大きく結果が変わってくると考えられます。まず「癌患者=腸が弱っている」「正常ではないはず」と疑って、とにかく腸の働きを活発化・正常化させるように努力してみて下さい。
 
私の父もとにかく胃腸が弱かったので、末期癌を克服するために腸内環境の改善には最大限の努力をしました。ヤクルトやヨーグルトなどの整腸作用があるものの摂取はもちろん、強力に腸内環境を整え、ホルモンバランスの調整を助けてくれる医療補助用植物発酵酵素の摂取を取り入れ、出来る限りのことをしました。私の父と同じように胃腸が弱い癌患者さんは、是非とも積極的に腸内環境の改善には取り組んで下さい。
 
以下、私が参考にした書籍より腸の大切さを学んだ部分を抜粋してご紹介します。ご参考になさって下さい。
 

参考文献 「悪性ガンは腸から治せ!」岩本光存欣医学博士

 
 

 

食べ物はどこから吸収されるのか

 
われわれ人間は、生きていくために、常に食物を摂取し、体外から身体を構成する成分とエネルギー源を取り入れている。そして、通常、その食物は、まずはじめに口に入れられ咀嚼され、胃や腸で細かく分解され、腸の粘膜から吸収されやすい物質に転換されたのち、栄養分として吸収される。
 
この分解・吸収過程を消化といい、これらの咀嚼、消化、吸収、排泄までの一連の作用を協調して営んでいるのが消化器であり、口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門までの通路が管腔構造であることから消化管ともよばれている。
 
ご存じのように、胃は食物を分解すると同時に、殺菌という大切な役割を果たしている。飲食物は、生のままにしても加熱されているにしても、大気中を通って口に入るわけだから、無数の細菌がついている。よく、人間の口の中は細菌だらけだというが、実際、文献によると1mLの唾液中には107個もの細菌がすみついているという。この気が遠くなるような数の細菌が胃の中に入ると、強烈な胃酸の働きで大半が死滅してしまうことになる。
 
ちなみに、胃酸はPh1~2の強酸である。胃自体がなぜ溶けないのかというと、それは胃壁がムチンというネバネバした粘液で覆われているからである。ムチンは肝臓でつくられているが、何らかの理由でこれがつくられなくなると、胃壁に穴が開いてしまう。
 
さて、こうした働きをしている胃だが、ここではアルコール及びアルコールに溶解した物質の一部が吸収されるとの報告はあるものの、栄養素や水の吸収機能はないという。吸収は、次の腸にいったときにやっと行われることになるのである。
 
胃で消化された物質は、小腸でさらに低分子まで分解が進められる。すなわち、十二指腸内で粘膜からの腸液と膵臓からの膵液に含まれる消化酵素、胆嚢からの胆汁、さらにはこれらの間で分泌される消化管ホルモンの協調作用によって、三大栄養素(糖質、たんぱく質、脂肪)の消化と吸収が、ここでほぼ完了する。そして、大腸では、小腸内で消化できずに送り込まれた一部の物質が腸内細菌によって分解(細菌性消化)され、水分が吸収される。これによって消化産物は粥状から半固形状、固形状となったのち、大便として体外に出されることになる。
 
 

 
ここで注目すべきものは、腸内細菌である。
 
消化管のメカニズムを考えたとき、物理的消化(歯による咀嚼や腸管の平滑筋運動による撹拌作用を含む消化)にしろ、化学的消化(消化酵素による消化)にしろ、それは人体そのものの働きである。しかし、細菌性消化はそうではない。働くのは、われわれの腸内に住み着いている細菌である。
 
地球上でもっとも優秀だと信じて疑わない人間が、実は細菌の力を借りているというのだから、何とも奇妙な話だ。
 
そして、この腸内細菌は、消化を助けるばかりでなく、われわれの健康に密接な関係があることがわかっている。
 
細菌というと、O-157や炭そ菌をすぐにイメージする方も多いと思うが、現在分類されている細菌の中で、人や動物に有害な毒素を出す病原菌はごくわずかで、それらの0.1%にも満たない。
 
また、人間は菌と共存して生きているといわれるように、常在菌(人体に永住している細菌)は大腸のほか、皮膚、結膜、囗、鼻、喉、尿路や生殖器の入り囗にも住んでいて、それらすべてを殺してしまったら、われわれは日常生活が困難などころか、死ねといわれているようなものなのである。
 
ここ数年、抗菌グッズや除菌を前面に押し出した洗剤等が大流行だが、決して「細菌」=「バイキン」ではないということだけは、しっかり認識しておきたい。
 
さて、われわれの腸内には、実に100種類以上、100兆個の細菌が住み着いているといわれている。
 
ある人がこんな計算をしてみた。細菌1個の大きさを直径1ミクロン(1ミリの1000分の1)としても、100兆個を1列に並べると、なんと10万キロメートル、実に地球2周半の距離になるというのである。また、人体を構成している細胞の数は約60兆個であるから、それよりはるかに多い数の細菌が腸の中に住み着いていることになる。
 
この腸内細菌は、人間が赤ちゃんとして誕生した瞬間からすみつき、一生、一緒に生きていくことになる。
 
胎児の腸内には細菌はまったくいない。例えば、誕生した赤ちゃんが生後1~2日のうちにする便は胎内にいたときの排泄物であるが、これを調べてみると細菌はいないことが多く、もしいたとしても、母親の産道の中にいる細菌と一致していることが多いという。
 
ところが、その後の便を観察してみると、生まれてから2~3日で、ゼロだった細菌が1000億個(便1グラム中)ぐらいに増えているというのである。つまり、赤ちゃんは、生まれてくるとき母親の産道を通ってくるので、そのときに細菌が入ったり、出産のとき手を触れる医師や看護婦からうつされたり、空気中に浮遊する細菌が、囗や肛門から入り込み、それがたちまち繁殖し、すみつくというわけである。
 
 

 
100種類100兆個の腸内細菌は、消化管にバラバラに存在するのではなく、叢(くさむら)のように存在していて、これを腸内細菌叢、あるいは腸内フローラ(お花畑)とよんでいる。
 
腸内細菌と一生うまく付き合っていくには、この腸内フローラのバランスをいつも整えておくことが、とても重要なのである。
 
一口に腸内細菌といっても、これらの中には有用なものもあれば、そうでないものもある。一般にいうところの”善玉菌””悪玉菌”がそれで、善玉菌は人の健康にとって有用な”発酵型細菌”、悪玉菌は健康に害を及ぼす”腐敗型細菌”。さらに体調によってどちらにも変わり得る菌、いいかえればフローラのバランスにより変化する菌、”日和見菌”の存在もある。
 
この大きく分類された3種類の菌叢のバランスによって、われわれの健康が管理あるいは左右されるといっても過言ではない。
 
善玉菌の代表は乳酸菌類、ビフィズス菌(乳酸菌の一種)、悪玉菌の代表はウェルシュ菌、大腸菌(毒性株)、ブドウ球菌、バクテロイデス(毒性株)、日和見菌には大腸菌(無毒)、バクテロイデス(無毒)など。
 
ちなみに、もっとも人体に有益に働いている乳酸菌は、腸内で以下のような活躍をしているのである。
 
食物の消化、吸収、代謝を補助
腸内のアルカリ度、酸性度を一定に保つ
免疫賦活作用(免疫系を活性化する働き)
外来細菌や化学物質、発ガン物質を排除
酵素の産出に関与
 
健康な人の腸内では、善玉菌が悪玉菌を抑え込んで優勢を保っている。しかし、何らかの理由で、悪玉菌が増えて活発に活動するようになると、腸内に入ってきたたんぱく質やアミノ酸を腐敗させて、たくさんの有害物質を発生させることになるのである。いってみれば腸の中が腐った状態になってしまうのだ。
 
肉や魚、その他食物が腐敗した状態を想像してみていただきたい。お腹の中にそんなものが詰まっているなんて、ゾッとするではないか。
 
腸内細菌の研究で著名な光岡知足博士の文献によれば、風邪・口内炎では、腸内細菌はビフィズス菌が減少し、大腸菌、腸球菌が増加。便秘や下痢の症状でも、ビフィズス菌が減少し、大腸菌、腸球菌が増加。胃潰瘍・胃ガン・大腸ガンの患者では、ビフィズス菌が減って、大腸菌、腸球菌、そしてウェルシュ菌が増加。肝硬変の患者では、ビフィズス菌は減少し、健康な人にはほとんど見受けられないベーヨネラという細菌の増加が観察されている。
 
しかし、実のところ、病気でもなんでもない平均的な人でも、悪玉菌の割合は、腸内細菌のなんと50%にも達するというのである。このことを知れば、「自分は健康だから大丈夫」などと呑気なことはいってられないだろう。
 
では、本当に健康といえるのは、どういう状態のときか? 
 
それは腸の細菌叢が変わるとき、便が柔らかくなり、排便回数が増し(日に2~3回)、腐敗臭つまり悪臭が消えたときである。こうなると細菌検査の結果は『陽性80、陰性20』(酸をつくる細菌が80%、その他の細菌が20%という意味)と出るはずなのである。ガン患者の大半は善玉菌20%悪玉菌80%になっている。
 
 

 
●ホルモンの感受性を高める因子をつくっている
●なかなか消化できない食物繊維などを消化する手助けをしている
●腸管免疫を活性化させる
●ビタミンをつくっている(ビタミンB群、ビタミンK、ニコチン酸、葉酸など)
 
 

 
健康な人= 善玉菌「8」:悪玉菌「2」
がん患者= 善玉菌「2」:悪玉菌「8」
 
 

 
前述したように、腸は栄養を消化吸収する大切な器官である。体に必要な栄養分は、腸壁から毛細血管を通って細胞に吸収される。これによって体の隅々まで栄養が行き渡り、各組織は生き生きと活動できるというわけだ。
 
ところが、腸内で悪玉菌が増殖して大量の有害物質がつくられるようになると、その毒が血液を汚染し、ドロドロの血が体中をかけめぐることになる。これでは体の活力が低下するのは当然なのである。
 
生命を維持していくために、血液は次のような役割を果たしている。
 

  1. ガス交換
  2. 免疫作用(白血球)
  3. 物質の運搬
  4. 体温を保つ

 
この使命を果たすには、血液は常にサラサラと流れていなければならない。ドロドロの血液では流れはスムーズとはいかないのである。また、血液に混じった毒は細胞にまで回ってしまうことになる。
 
これを繰り返していると、しまいにはガンや糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病になっていくことは、もはや疑いようもないのである。
 
また、悪玉菌が腸内にはびこるようになると、たとえ大病に至らなくても、体の老化が早まるのは確実なことである。スポーツクラブで体を鍛えたり、スキンケアに気を配るのもいいことではあるが、若さを保ち、健康を維持しようとするのなら、まずは自分の腸内環境に関心をもつことなのである。
 
腸は、たいへん我慢強い器官なので、少々無茶をしても黙って働いてくれる。しかし、それをいいことに飲み過ぎ、食べ過ぎなど、腸に負担をかけ続けていれば、あなた自身があとで高いツケを支払うはめになるのである。
 
●疲れやすい
●だるい
●風邪をひきやすい
●肩こりゃ頭痛がひどい
●あまり食欲がわかない
●肌荒れが気になる
●顔色が悪く、化粧のノリも悪い
●ニキビ、吹き出物ができやすい
●便秘が続いている
 
このような症状は、腸内汚染(腐敗)の初期の段階であることが多いという。そして、これを放置しておくと、重大な疾患につながっていく可能性が高いことが指摘されている。汚れた腸は病気の元、きれいな腸は健康の元。
 
よって、腸内をきれいにすることが、われわれが、今、真っ先にやるべきことなのである。
 
 

 
20歳代の女性の腸を調べたところ、約2割が60歳以上の腸の状態だったという話がある。"腸年齢"が実年齢よりも40歳以上も高い、つまり老化しているというのである。
 
では、老化した腸とは、どういう状態を指すのだろうか。
 
腸内細菌のバランスは、年とともに変化していくという。前に述べたように、母親の胎内にいるとき腸内は無菌状態である。
 
そして生後4日頃から善玉菌の代表格であるビフィズス菌が現われ、さらに増え続け、赤ちゃんの腸内は90%以上がビフィズス菌で占められることになる。だから、赤ちゃんの便は黄色っぽく、甘酸っぱい香りがするのである。これは腸内が非常に安定していて、きれいな状態を維持している証拠でもあるのだ。
 
けれども、われわれは、生涯ずっと赤ちゃんのときのような腸内細菌のバランスを保つことはできない。離乳期になり、大人に近い食べ物をとるようになると、悪玉菌が増えはじめ、大人の腸の状態と変わらなくなってくる。大人になると、健康時には腸の中はそれなりに安定しており、善玉菌と悪玉菌はバランスを保って生息しているといわれている。
 
では、本当に健康な成人の腸の状態はというと、普通、腸内細菌全体の15~20%をビフィズス菌が占めているのだという。そして、40代になる頃から大腸菌やウェルシュ菌の繁殖力が高まってきて、老年期になるとビフィズス菌は激減、1%以下になるというデータもあるほどなのである。
 
このように、われわれ人間の腸内は年とともに善玉菌が減り、腸内腐敗をもたらす悪玉菌が増えていってしまうのである。
 
すなわち、これが腸の老化ということなのである。
 
 

 
腸内フローラの分布は、離乳期に決まるといわれる。したがって、その時期に食べさせるものによって、よい腸内フローラをもつ子どもに育てることは可能だという。しかし、実際には、そのときよいフローラができても、それが続くとは限らない。なぜなら腸の中はなかなかデリケートな世界で、その後の環境や食生活などによって、変わってしまうのだという。
 
ということは、もし、あなたが、現在、比較的腸内フローラのバランスがよい状態であるとしても、いつ何時、そのバランスが崩れ、腸内腐敗という事態を招くことになるかわからないのである。
 
善玉菌を減少させ、悪玉菌を増加させる、その大きな原因の一つは食生活にある。
 
昔ながらの「ご飯にみそ汁、野菜の煮物に漬物」といったような和食は、善玉菌が増えることがわかっている。しかし、われわれ日本人の食事は、年々、肉中心の欧米型に近付いてきており、「高脂肪、高たんぱく、低糖質、低食物繊維」のメニューが定番になってしまった。
 
これが腸にとっては最悪なのである。こういう食生活を続けていると、腸の中はまたたくまに悪玉菌でいっぱいになってしまうのである。悪玉菌の勢力が強くなった結果、当然、善玉菌は駆逐され、腸は老化の一途をたどることになるのである。
 
ちなみに、善玉菌の好物は酸性の物質だという。したがって、腸内環境のためには、味噌、醤油、酢、酒などの発酵食品、ヨーグルトなどの乳酸菌食品、梅干し、みかん、オレンジ、レモンなどの柑橘類などを摂取するといいのである。
 
 

 
日本人のライフスタイル、とくに食生活の欧米化は、著しい大腸ガンの増加につなかっているといわれている。
 
疫学的には、大腸ガンが多い国では胃ガンが少なく、反対に胃ガンが多い国では大腸ガンが少ないとされる。事実、過去日本では、胃ガンで死亡する人が圧倒的に多く、大腸ガンで死亡する人はわずかだったが、ステーキやハム、ソーセージ、バター、ハンバーグなどの動物性の脂肪を好んで食べるようになった結果、このような変化が起こってきた。
 
では、なぜ欧米型の食事は大腸ガンを増やすのか?
 
まず、一番大きな原因は、腸内の悪玉菌。大好物のたんぱく質や脂質を栄養として増殖した悪玉菌は、前にも述べたように、さまざまな有害物質をつくりだす。その中には、恐ろしい発ガン物質も多く含まれているのである。
 
また、われわれの体は、動物性脂肪を多くとると、脂肪の消化吸収を助けるために肝臓から胆汁が分泌されるしくみになっているが、悪玉菌はこの胆汁の中の胆汁酸を二次胆汁酸という物質に変化させてしまうのである。そして、この二次胆汁酸には、発ガンを促進させる作用があり、それによってますます大腸ガンにかかりやすくなってしまうというのである。
 
さらに、欧米型の食事には食物繊維が少ないという問題がある。便秘がちな人は食物繊維を多く摂るとよいことは誰でも知っていると思うが、便秘、すなわち腸の内容物が排泄されるまでの時間が長くなると、それだけ悪玉菌がつくりだした毒素や発ガン物質も長く腸内にとどまることになり、大腸ガンのリスクが高くなるのである。
 
食物繊維を摂取すると大腸ガンになりにくいことは、多くの疫学的データから明らかになっている。この説明として、これまでは食物繊維がスポンジの役割をして腸内の有害物質を捕まえて体外に排出してくれるためとされてきたが、1998年、ハーバード大学医学部のリチャード・ホーデン氏が、大腸にすむバクテリア、つまり善玉菌が食物繊維を分解して酪酸を生産することでガン細胞の増殖を抑えると発表した。
 
つまり、食物繊維は人のもつ酵素では分解されないが、大腸にすむ細菌によって分解されるのだという。そして、それによってできた酪酸は、現在ガン研究でも、ガン細胞の増殖抑制の目的で利用されている物質なのだ。
 
しかも、その際に利用される酪酸の濃度は約10ミリモルで、腸内細菌によって生産される酪酸の濃度と非常に近いというから驚きである。
 
 

 
腸内細菌のバランスが崩れるのは、食生活の影響ばかりではない。例えばストレスを感じても、それは起こるのである。
 
ストレスには、大きく分けて次のようなものがある。
 

  1. 物理・化学的なストレス(気温、気圧、騒音など)
  2. 生理的なストレス(飢餓、感染、過労、妊娠など)
  3. 精神的なストレス(不安、緊張、悲しみ、怒りなど)

 
こうしたストレスを受けることによって、当然体調にも異変が起こり、腸内細菌にも変化が起こると考えられる。
 
腸内細菌とストレスとの関係は、日本をはじめ海外でも多くの動物実験が行われているという。その結果、マウスやラット、ニワトリなどでストレスを与えたクループは腸内細菌分布のバランスを大きく崩し、有害々腸内細菌が増加し、有益な腸内細菌は減少していたのである。
 
また、1976年、NASA(米航空宇宙局)が打ち上げた有人科学実験探査機スカイラブの宇宙飛行士3人の腸内細菌を調べたところ、通常の腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増加していたという報告もある。
 
どんなに訓練を積んだ宇宙飛行士でも、宇宙船という閉鎖された入れ物ごと地球を離れることは相当なストレスであり、てきめん腸内細菌も変化してしまうということである。
 
 「すぐに、お腹にくるんですよ」
 
あなたの周りにも、こんな人がきっといるはずである。何か心配ごとがあったり、イライラしたりすると、下痢になったり便秘になったりするという人は意外にも多い。これなども、そのストレスによって腸内細菌が変化した結果と考えられる。
 
ストレスによって、このような影響がでてくるのには、一つには腸の蠕動運動の変調が原因と考えられている。
 
消化途中の食物が腸を移動するとき、腸は蠕動運動を行う。ところが激しいストレス状態に陥ると、その運動が非常に鈍くなる。その結果、胃酸や腸液の分泌が悪くなり、腸内細菌のバランスが崩れてしまうというわけである。
 
また、蠕動運動は、腸内細菌の一種、善玉菌である乳酸菌が産生する乳酸の刺激によって活発になる。
 
腸内細菌のバランスが崩れれば、当然、この影響は小さくなってしまう。すると、さらに蠕動運動は鈍くなり、悪循環がつづくことになるのである。
 
 

 
前述したように、腸内細菌は食物繊維など、われわれ人間の消化管から分泌される酵素では消化できない物質を消化するときに役立っている。腸内細菌は人間の「もう一つの臓器」だという人もいるが、腸内細菌によって合成される消化酵素や代謝酵素の種類は、肝臓でつくられる酵素の種類より多いという説もあるくらいなのである。
 
われわれ人間は、腸内細菌にエサとなる栄養分を与え、腸内細菌はそれを吸収するために消化酵素を出して分解する。そして、人間は、腸内細菌が最小単位にまで分解した栄養素を効率よく吸収していくのである。そのとき、腸内細菌が分泌している分解酵素も栄養素と一緒に体内に吸収されていくわけだが、これが、人間の体内酵素の材料として使われ、再び必要な形の酵素に再生されていくのである。
 
また、腸内細菌は、ビタミンの合成にも大変重要な役割を果たしていることがわかっている。ビタミンは人間にとって絶対に必要な栄養素であり、われわれは通常さまざまな食べ物を通じて体内に取り込んでいる。
 
ところが、腸内細菌もビタミンをつくってくれているというのである。合成されるのはいビタミンB1、B2、B6、B12、K、二コチン酸、パントテン酸、イノシトール、葉酸など。
 
ただし、その一方ではビタミンを分解する細菌もいるという。例えばビタミンB1を摂取しているのに脚気になる人がいるが、こういう人の便を調べてみるとアノイリナーゼ産生菌が検出される。
 
腸内にいるこの菌が、実はビタミンB1をせっせと分解しているのである。が、一般に腸内細菌はビタミンを合成し、われわれ人間をヘルプしているのである。
 
 

 
さらに、腸内細菌は、生体内のホルモン代謝についても重要な役割を果たしているというのである。
 
ホルモンとは、特定の細胞で産生され、分泌され、特定の組織で作用する化学物質で、その量はきわめて微量であるが、全身の物質代謝を調整するためにはなくてはならないものといえる。視床下部、下垂体、甲状腺、副腎、膵島、卵巣、精巣など、われわれの体の組織は多くの内分泌器官を有しており、ホルモンはそこから分泌される。
 
このホルモンの循環作用系の中に、腸内細菌がちゃんと組み込まれているというのだ。動物実験では、腸内細菌がいない無菌動物の場合は、腸内細菌がいる通常の動物に比べてホルモン産生能や代謝機能が明らかに落ちているという結果がでているという。また、通常動物と無菌動物の便を調べてみると、無菌動物の便の中にはホルモンが検出されなかったというデータもある。
 
こうしたことから、現在は腸内細菌はホルモンの感受性を高める因子を産生しているのではないかと考えられており、腸内細菌がいないと産生されないホルモンがあるということが明らかになった。
 
いずれにしても、腸内細菌とホルモンには密接な関係があるということなのである。
 
また、生体の外から入ってくる化学物質、つまり薬物が腸内細菌によってはじめてその効力を発揮するということもある。
 
例えば、化膿や炎症を抑えるときに使用されるサルファ剤は、口から飲んで大腸まで到達すると、腸内細菌が別な物質に変換して、はじめて病原菌に対抗できるようになるのである。こうした腸内細菌の力を利用した薬剤は意外にも多く、潰瘍性大腸炎の治療薬やパーキンソン病の治療薬などの中にもあるという。
 
ここまでくれば、もう本当にりっぱな臓器である。腸内細菌をないがしろにすることほど、われわれ人間にとって無謀なことはないのである。
 
 

 
腸内細菌のバランスをとるということは、腸内をきれいにするということとイコールであることは、すでにおわかりいただけたかと思う。そして、それを怠ると腸が腐敗し汚れ、さまざまな疾患の原因になることも述べた。
 
ところで、人体には、もともと病原菌などの外敵から身を守るための力、生体防御力が備わっていることはご承知のとおりである。免疫機構もその一つで、これに関しては別ページで詳しく説明しているが、ここで重要なのは、腸内が体のなかでも免疫系がもっとも多く存在しているところだということである。これは意外に知られていない事実である。
 
口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門までの通路は管腔構造である。したがって消化管は体の内側にあるように思いがちだが、実際は食べ物や飲み物などの溶媒を通じて、外界にさらされているのと同じなのである。つまり、何か飛び込んでくるかわからない大変危険な場所である。ことに腸は体に必要な栄養素を吸収する場所であるから、外から侵入してくる有害菌や異物に備える必要性が高いのか、多くの免疫機構が準備されているというのである。
 
「内なる外」ともいえる消化管は、外部と内部の接点にあって、雑多な食物中の抗原や常在菌の産物と絶えず接触しながら、巧妙に働いているのだという。消化管の内壁はひだひだをもつ粘膜で覆われていて、その粘膜はさらに粘液で覆われている。そして、粘膜のすぐ下には毛細血管が走り、その周囲、粘膜固有層とよばれる部分にたくさんの免疫系の細胞が分布しているのである。
 
粘膜はただ一層の細胞(上皮細胞)からなっていて、しかも弱い細胞で、古い細胞と新しく生まれる細胞が頻繁に入れ替わっているのだという。その上皮細胞の隙間には特殊なT細胞(免疫細胞の一つ)=上皮間リンパ球がいて、崩壊と新生を繰り返している細胞に起こりやすい突然変異によるガン化の兆候を発見し、ガン化した細胞を排除していると考えられるのだ。
 
 

 
また、特に回腸の粘膜固有層にはたくさんの免疫細胞が集中しており、パイエル板というリンパ組織を形成している。さらに常在菌が多い虫垂(盲腸)や大腸の粘膜固有層にも免疫細胞が待機し、各所に小さなリンパ組織が散在。腸間幕とよばれる腸をつないでいる幕(腹膜の一部)にも多数のリンパ節があって、腸管を体内の他の部分から隔てているというのである。
 
こうして見ると、腸を中心とした消化管は、免疫細胞がびっしり集まった人体最大の免疫臓器ともいえるのである。腸内細菌(善玉菌)は、この腸管免疫を活性化し、体の免疫力を高めるという大切な働きも担っているのだ。
 
つまり、これに注目し、腸内環境を整えるなら、ガンや難病に打ち勝つことも不可能ではない。
 
 

 
生活習慣、特に食生活の改善で、腸内環境は多分に整えられる。が、しかし、それがそうたやすいことでないことをわれわれは知っている。また、ストレス時代といわれている今、自分の力だけでそれを回避することも至難の技といえる。現代に生きるわれわれは、好むと好まざるにかかわらず、知らず知らずのうちに自分の腸を痛めつけ、腸内環境の悪化を招き、体に悪さを働く悪玉菌を増やしている。
 
われわれは、それに手をこまねいているわけにはいかない。何か積極的な策を講じるべきである。
 
ガンは、まさに現代病の筆頭である。治療の研究が進み、ここ30年余りの間に治癒率が比較的高くなったといわれている。
 
しかし自覚症状が乏しく、早期発見が難しいガンや、難治性のガンの生存率は以前として低く、3人に1人がガンで亡くなっているのが現状である。患者やその家族が、いかに深刻であるかは想像に難くない。
 
 

 
ガンがどのように発生するのかを知っておく必要があるだろう。
 
一言でいえば、ガンは遺伝子の変異によって引き起こされる病気である。ガン細胞のルーツは正常細胞で、たった一つの正常細胞が分裂していく過程で遺伝子変異を起こし、時間とともにさらなる変異が蓄積すると、ガンになる。
 
人間の体は60兆個の細胞からなると前に述べたが、そのすべての細胞が、それぞれの場所で、それぞれの与えられた役割を果たしている。
 
だからこそ、われわれは生き延びていられる。
 
ところが、ガン細胞は本来の役割をはたせず、細胞社会の秩序を乱す暴走細胞である。どんな場所であろうと、おかまいなしに傍若無人に振る舞い、正常細胞を蹴散らし、破壊し、増殖を続けるのである。
 
ある種の化学物質やウイルス、紫外線、など、ガンを引き起こす因子はいくつもあげられる。なかでも、最近とくに注目されているのが活性酸素だ。われわれの周りは、いってみれば「発ガン物質」だらけなのである。
 
この発ガン物質といわれる化学物質の中には、直接DNAを傷つけるものもあるが、そのほとんどは細胞内で活性化されてDNAに結合し、遺伝子に変異を起こすのだという。例えばもっともよく知られた発ガン物質で、ベンツピレンというタバコの煙に含まれる化学物質は、核内に取り込まれるとDNAの塩基と結合してしまう。その結果DNAはその結合部分で正しい複製が行われなくなってしまうのである。
 
一方、遺伝子変異は、こうした外的要因がなくても細胞内部で生じることも多い。例えば、細胞がDNAを複製するときにエラーを起こし、それをうまく修復できないことがある。このような誤りがガンにつながる大きな原因にもなるのである。
 
 

 
細胞周期という言葉を聞いたことがあるかと思う。
 
細胞には「必要なときに分裂し、必要なだけ増えると分裂を停止する」という細胞周期があり、細胞が円滑に活動するには、こうした正しい細胞周期が不可欠なのである。例えば、傷を治したり、成長するには、細胞分裂は急ピッチで行われなければならないが、完成した臓器を一定の大きさに保つには、ある程度停止させておかなければならない。こうしたことのすべてを、正常な細胞はさまざまな分子信号から判断しているのだという。
 
正常な細胞に、分裂を命じる信号が伝わると、細胞は分裂に先立ってたんぱく質合成などのDNA複製準備をはじめることになる(G1期)。準備ができるとDNAが複製され(S期)、その後、細胞分裂の準備(G2期)を経て、細胞分裂が行われ(M期)、再度分裂を命じる信号が送られてくるまで停止状態(G0期)となるのである。
 
正常な細胞は、こうした細胞周期のルールを厳密に守っているのだが。ガン細胞では蓄積された遺伝子の傷によって、このルールが守られない。つまり、分裂を抑制する信号が働かないのである。その結果、細胞はG0状態に入ることなく、「G1→S→G2→M」の分裂サイクルが延々と続く。
 
 

 
最近の遺伝子研究によって、人間の遺伝子には、ガン発生に関わっている遺伝子が何種類も組み込まれていることが解明されている。ガンを発生させるガン原遺伝子や、逆にガンの発生を抑えるガン抑制遺伝子などである。
 
ガン原遺伝子は、それ自体は正常な遺伝子であるが、それが何らかのトラブルで変化を起こしたとき、つまりは遺伝子が損傷を受けたときガンの引き金になることがある、という意味でガン原遺伝子なのである。
 
一方、ガン抑制遺伝子は、ガン細胞増殖にブレーキをかける役割を担っている。それからつくられるたんぱく質は、何らかの方法で細胞の異常な増殖を抑制する働きを担っていることが知られている。DNAが損傷を受けたとき、細胞周期の進行を止める働きをするたんぱく質、DNAの損傷を修復する酵素として働くたんぱく質などがそれである。
 
例えば、p53遺伝子と呼ばれるガン抑制遺伝子からつくられるp53たんぱく質は、細胞内のDNAの損傷や酸素の欠乏を監視する役割をもっている。つまり、このp53遺伝子は、細胞が「損傷を受けたDNAを修復すべきか、修復不可能としてアポトーシスを起こさせる(自殺させる)べきか」といった判断をくだすときに中心になって働くのである。
 
そして、修復可能という判断をくだした場合は、ただちにp21遺伝子に命令してp21たんぱく質をつくらせるのである。p21たんぱく質は細胞周期をG1期で止め、次のS期に進ませないようにする。これではDNAは複製されないから、変異が生じることはない。その間に、p53たんぱく質はDNAの損傷を修復する。修復が完了するのを確認したp21たんぱく質は、細胞周期をS期にすすめる。こうして細胞は、まるで何事もなかったかのように、通常のサイクルにもどるというわけである。
 
このように、ガン抑制遺伝子は、細胞のガン化を未然に防ぐ重要な存在である。ところが、このガン抑制遺伝子自体が、ガン発症を招くことにもなり得るというのである。つまり、ガン抑制遺伝子の不活性化がガンにつながるのである。
 
人間の細胞には23種類の染色体が2セット含まれており、どんな遺伝子も2個ずつある。ガン抑制遺伝子の場合、2個ある遺伝子の両方ともが変異すると、ガンが発生することがわかっているのである。
 
 

 
ガンは完治するのが難しい。周囲の正常な細胞にまで侵入(浸潤)する。体のほかの場所にも広がる(転移)。治ったと思っても、また再発する……。これほどしつこい病気がほかにあるだろうか。が、それこそがガンの特性であり、現代医学をもってしても、人類がいまだに全面勝利をおさめられない理由なのだ。
 
まず、ガン細胞は、死ぬべきなのに死なない細胞なのである。
 
先ほど、アポトーシスという言葉が出てきたが、本来、正常な細胞は、自分が分裂すべきか自殺すべきか判断するために、常に細胞の内外からの信号を慎重にうかがい、自分が誤った場所にいることや、DNAが修復不可能なほどダメージを受けたことがわかったときには、アポトーシスを起こして自らを破壊する力を備えている。しかし、ガン細胞は、そのシステムを故障させてしまっていることが多いというのである。
 
また、ガン細胞はbc1-2とよばれるたんぱく質を大量に生産して、自らアポトーシスがおきないようにしてしまうこともあるという。このbc1-2は、正常細胞では不必要なときにアポトーシスがおきないように制御する働きを担っている物質である。
 
次に、ガン細胞は半永久的に分裂を繰り返す細胞なのである。
 
人間の正常細胞は、培養すると50~60回分裂して、成長が止まる。つまり、正常細胞には明からに寿命というものがあるのである。
 
では、ガン細胞はどうかというと、驚いたことに寿命がないのである。培養するとずっと分裂しつづけることができるのだというのである。
 
これは、テロメラーゼという酵素を、多くのガン細胞がもっているからである。染色体の末端部分はDNAの繰り返しで保護されており、この繰り返し配列をテロメアといい、正常細胞では、テロメアは分裂のたびに短くなり、半分程度にまでなると、細胞分裂は停止して、細胞は死ぬことになる。ところが、テロメラーゼはテロメアを合成して伸長する働きがあるため、ガン細胞は死を回避できるというのである。
 
太古の昔より、不老不死は人間にとって永遠のテーマであるが、自らの分身でありながら憎き敵と化したガン細胞だけがそれを手に入れているとは、なんとも皮肉である。
 
 

 
さて、ガンに見られるもっとも恐ろしいメカニズムの一つは、やはり転移である。実のところ、この転移のメカニズムはまだまだわからないことのほうが多い。
 
ガン細胞が転移するには、まず腫瘍から離れなくてはならない。一般に細胞は基底膜とよばれる膜と結合することで、その場にとどまっているのだが、その基底膜から逃れるため、多くのガン細胞は、基底膜に結合するためのたんぱく質を分解してしまう酵素を生産するのである。
 
自由に動きまわれるようになったガン細胞は、毛細血管に入り込み、血流に乗って体中へ運ばれるというわけである。そして、別の組織にすみつき、さらなる大帝国を築き上げようとするのである。
 
やっかいなのは、ガンは転移すると悪性度が高まるということである。われわれ人間が、さまざまな経験をし、逆境に耐え抜いていくたびに、たくましくなっていくのと同じように、ガン細胞も新天地で帝国をつくりあげるたびに強くなっていくのだという。
 
すなわち、自分とまったく異なる組織に侵入し、それまでに出会ったことのない細胞と共存し、新たな増殖にとりかかるとき、ガン細胞は新しい方法論を見出し、適応していかなければならないのである。つまり、転移したガン細胞とは、そうした能力を獲得した細胞ということになる。
 
 

 
さて、われわれの体がうまく機能していくために、なくてはならない物質に酵素がある。酵素は、ガン細胞の発生にもおおいに関係しており、その一つが、先ほどガン抑制遺伝子のところで述べた遺伝子を修復する酵素である。
 
また、ガン遺伝子が動きだして、異常な細胞の分裂、増殖が止まらなくなったとき、異常細胞のかたまりを一斉に分解させる働きをする酵素もある。この酵素の作用によって、ガン化を始めた細胞は増殖を停止すると同時に徐々に死滅、つまりアポトーシスが起こり、ガン細胞は自然消滅していくことになる。
 
さらに、いち早くガン細胞を異常な存在として判断して、排除するための免疫システムを動かすために必要な情報を伝達する役目を果たしているのも酵素である。そして、排除するための最初の攻撃部隊となるのも、やはり酵素なのである。
 
これらの酵素は、免疫細胞の中でつくられている。すなわち、免疫細胞の中にあるDNAの遺伝子情報をもとに、さまざまな役割をもつ酵素が生成され、分泌されていくのである。免疫の多面的な機能性は、すべて酵素の働きによって維持されているといってもいいだろう。
 
免疫力の高い人は病気になりにくいといわれるが、免疫力はまさしく酵素力でもあるのである。
 
酵素力が強い人は、体の中にガン細胞が生まれるそばから攻撃していき、結果、ガンという病気にならずにすむというわけである。
 
つまり、体内の免疫機能に必要なさまざまな酵素が十分つくられ、しっかりと働いていれば、人は強い免疫力を維持することができるのだ。
 
 

 
「腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪化するとガンになる」
 
いささか乱暴ないい方ではあるが、その可能性が大いにある、ということは、すでに皆さん、おわかりのはずである。
 
腸内の悪玉菌が有害物質をつくりだし、人間の体に害を与える。そして、その中にはガンを引き起こす物質もある。とすれば、ガンからわれわれが身を守るには、まず、この有害物質を除去すること、あるいは発生させないことである。それには腸内細菌のバランスをよくすること、すなわち善玉菌優勢の腸内環境をつくることであり、それをすみやかに行ってくれるのが、免疫乳酸酵素というわけなのである。
 
例えば、皆さんは、ニトロソアミンという物質を聞いたことがあるだろうか? ガンの話をするときには、必ずといっていいほど名前がでてくる物質である。
 
このニトロソアミンが有名になったのは1954年のことで、当時、ニトロソアミンとほぼ同じ性質をもつ、ジメチルニトロソアミンという物質を扱っていたイギリスの4人の研究者が、肝硬変を起こし、その中の1人は肝臓ガンで死亡してしまった。このとき、初めてニトロソアミン類の強い発ガン性がわかった。
 
恐ろしいことに、このニトロソアミンが、実は、われわれの体の中でつくられているのである。
 
肉や魚にはアミン類が含まれている。一方、ハムやソーセージ、その他多くの加工食品には、美味しそうに見せるため発色剤が使われ、長持ちさせるために防腐剤が使われている。こうした発色剤や防腐剤には亜硝酸が含まれている。このアミン類と硝酸が、われわれの胃の中で胃酸と出会うと、ニトロソアミンがつくられるというのだ。現在では、危険な発色剤や防腐剤は使われなくなっているが、亜硝酸は野菜にも含まれているため、完全に、われわれの食卓からシャットアウトすることは不可能といえる。
 
 

 
では、今後われわれは、ステーキにサラダ、スキヤキ、肉野菜炒め……といった、馴染みのあるメニューを一切排除すべきなのでは?
 
その必要はない。ニトロソアミンを防御してくれる、もっとも素晴らしいパートナーをわれわれは自分の腸の中にもっているからだ。
 
イギリスの口ーランド博士とグラッソ博士らは、ニトロソアミンと代表的な腸内細菌である大腸菌を試験管の中で混ぜ合わせてみた。すると、ニトロソアミンは分解されて、二級アミンと亜硝酸塩と不明の揮発性物質に変わってしまい、発ガン性はなくなってしまったのである。さらに、乳酸桿菌、ビフィズス菌、腸球菌についても同様な実験をしたところ、分解する力は菌種によって異なるものの、いずれもニトロソアミンを分解することがわかったのである。
 
また、タバコの煙をはじめ、土の中や水、石油、油、排気ガス、魚や肉の焼焦げの中などにも含まれている、強力な発ガン物質ベンツピレンも、シュードモナス、大腸菌、バチルスなどの腸内細菌で分解、無毒化されることもわかっている。さらに、発ガン性のアミンの一種が、大腸菌で無毒化されることも報告されているのである。
 
しかし、喜んでばかりはいられない。おわかりだと思うが、腸内細菌がこうした働きをしてくれるのは、腸内細菌のバランスがとれているときだけの話である。もし、そのバランスが崩れてしまっていたら、腸内細菌は発ガン物質に対抗できないばかりか、優勢になった悪玉菌が有害物質をつくりだし、毒性をさらに促進し、われわれの体を蝕むことになるのである。
 
ちなみに、この場合の大腸菌は、悪玉菌ではなく日和見菌ととらえたほうがわかりやすい。悪玉菌が優勢になったとき、それまで善玉菌の味方をしていた大腸菌はさっさと鞍替えして、悪玉菌と一緒に悪さをするようになるのである。
 
 

 
人間の生命を守るために、非常に重要で不可欠な機能の一つが免疫といわれるものである。外部から体に侵入してくる細菌やウイルス、あるいは異物をすみやかに撃退し、健康を維持するという人体を防御するシステムである。免疫機能が衰えてしまえば、われわれ人間の生命は、即、脅かされることになる。
 
例えば、ガン細胞の発生は、われわれの一生のうちで10億回もあるといわれている。つまり、10億回もガンが発病する可能性があるというわけである。
 
しかし、実際には、そんなにガンにかかることはありえない。それは、まさしく、われわれが免疫の機能をもっているからである。
 
免疫機能がアップすれば、われわれの体はガンと闘い、しかも打ちまかすことも可能なのである。
 
 

 
ところで、免疫に関係する器官や組織であるリンパ系は、一次リンパ系と二次リンパ系に分かれる。
 
一次リンパ系は、免疫系の細胞が生まれて成熟する器官のことで、人間では骨髄と胸腺(また胎児期の肝臓)がこれに当たる。つくられた免疫細胞は、まず血流に乗り、全身の二次リンパ系に配備されることになる。マクロファージやリンパ球は、毛細血管からにじみ出る血液中の余分な水分と一緒に血管を出て、リンパ管へと入り込む。そして、その中をリンパ液の流れに乗ってゆっくりと進むのである。
 
リンパ管が枝分かれする分岐点には、リンパ節(腺)があって、リンパ球が集まっている。リンパ節は単なるリンパ管の中継点ではなく、異物を排除する免疫反応そのものが起こる器官なのである。リンパ節は全身に数百個もあるといい、なかでも上顎と喉から首にかけての部分、脇の下、太股のつけ根、内臓や腸をつなぐ腹膜などに多く集まっている。そして、リンパ管を流れるリンパ球の一部は再び血流にもどる。
 
血液中の異物を専門的に処理する脾臓にも、リンパ球が集中している。そして、腸を含む消化管壁には、その全長にわたって多くのリンパ球が分布しており、前述したように回腸には特に多くのリンパ球が集まってパイエル板というリンパ組織をつくっているのである。
 
さて、ガン細胞を攻撃するT細胞は骨髄でつくられた後、胸腺で教育を受けるが、その胸腺の機能は年齢とともに衰え、中高年になるとほとんど機能しなくなる、と前に述べた。そこで、中高年になると、小腸がT細胞の教育機関としての機能を発揮するようになる。すなわち、小腸の栄養分を吸収する細胞の間にある、腸管独特のリンパ節であるパイエル板が、この役割を果たすことになるのである。
 
パイエル板で免疫システムの指揮官としての教育を受けたT細胞は、腸の粘膜の中に広く分布して、他の免疫細胞に指令を出しながら、ガン細胞や病原菌、微生物につねに目を光らせている。さらに小腸の粘膜からはガン免疫に有効なTh1を増やすサイトカインであるインターロイキンが分泌されている。
 
このように、腸管では、二重三重に免疫システムが働き、われわれの健康維持に大切な役割をしている。したがって、腸管免疫を活性化するためにも、腸内環境をよい状態にしておくことが大切なのである。
 
一般に、腸管免疫が常に活性化しているのは全体の5%程度で、残りの95%は眠った状態(不活性)にあると言われているが、その眠っている部分を活性化させればより免疫賦活をさせる事も可能である。