末期癌と闘われる方々への
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難病末期癌からの生還~タイトル画像小

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乳がんの標準治療を知る

末期癌克服への架け橋区切り線

 
乳がんの手術は、最近では、できるだけ乳房を残すような方法が行われるようになっています。まずは、自己検診をしたり、集団検診を積極的に受けて、早期発見に努めることが大切です。
 
 

 
環境の変化とともに増えている。エストロゲンの過剰分泌が原因
 
 

●日本では乳がん罹患率が年々増加し、女性のがんの第1位になっています。

 
2020年現在、生涯罹患リスクは9%で、11人にひとりの女性が生涯で乳がんにかかるとされています。乳がんになりやすい年齢をみると、ほかの癌腫とは異なり、30歳代後半から増えてきて、40歳代後半と60歳代前半にピークがあります。
 
 

●エストロゲンの過剰分泌が原因

 
乳がんは、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンが過剰に分泌された刺激によって発症します。
 
では、なぜエストロゲンが過剰に分泌されるのでしょうか。その原因は閉経前の女性と閉経後の女性とで異なります。
 
▼閉経前の原因……社会の複雑化に伴って、出産を経験しない女性や、初産年齢の高い女性が増えました。また、初潮の時期が早まり、閉経の時期が遅くなることで、月経のある期間が長くなっています。さらに、ストレスの増加などによって、月経不順の女性も増えています。これらのことによって、ホルモンのバランスが乱れたり、卵巣の機能が正常に働かなくなることがあります。そのため、卵巣のエストロゲンが過剰に作用すると考えられます。
 
▼閉経後の原因……現代は食生活が豊かになり、特に動物性脂肪の摂取量が増えたことで、以前に比べて体脂肪の多い女性が増えてきました。体脂肪の多い人は、卵巣から女性ホルモンの分泌が止まる閉経後も、エストロゲンの過剰産生が続きます。というのは、エストロゲンは末梢の脂肪組織でも産生されるからです。かつて日本では、閉経前女性の乳がんが多かったのですが、最近は、閉経後の女性の乳がんが特に増える傾向にあります。こうした原因には、環境や社会状況が深くかかわっていて複雑なため、原因を取り除くのは、たいへん難しいといえます。そこで、乳がんの対応策としては、早期発見に努めることが重要となります。
  
 

難病末期癌からの生還・区切り線

 
1か月に1回、しこりの有無や乳頭の異常をチェックする
 
 

●自己検診

 
乳がんを早期に発見するためには、まず自己検診を行いましよう。乳房や乳頭を目で見る「視診」と、乳房を手で触る「触診」によって異常を調べます。この自己検診は、1か月に1回行うようにします。
 
 

●集団検診

 
乳がんの集団検診は、以前は、視診と触診によって行われていましたが、現在では、マンモグラフィー(後述)による画像検査も行われるようになっています。これによって、視診や触診では発見できなかった小さな癌も見つけることができるようになりました。
 
閉経前の女性は1年に1回、閉経後の女性は2年に1回は、検診を受けるようにしたいものです。
 
 

●異常があれば専門医を受診

 
自己検診で気になる症状が見つかったり、集団検診で異常を指摘された場合は、すぐに乳腺外科、あるいは外科などの専門医を受診することが大切です。
 
 

◇自己検診の方法

 
自己検診は、1か月に1回行いましょう。閉経前の女性は月経後4~5日目に行うと変化がわかりやすいので、効果的です。
 
 
▼視診……鏡の前で、乳房や乳頭の異常がないかを調べます。乳房では「くぼみ、ひきつれ、盛り上がりがないか、左右対称になっているか」などを見ます。乳頭では「陥没、ひきつれ、ただれ、異常な分泌物がないか」を調べます。
 
▼触診……指の腹で乳房をなでるように触って、しこりの有無を調べます。
 
 

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画像診断によって、早期の癌が発見できるようになった
 
 

●視診、触診

 
自己検診と同じように、医師が乳房に触ったり、乳房や乳頭の状態を観察することで、癌の有無を調べる方法です。乳がんを探すうえで重要な方法です。
 
 

●画像診断

 
最近は画像診断が発達し、視診や触診では発見できなかった癌が、見つけられるようになってきました。
 
乳がんの画像診断

 
まず行われるのは、乳房のエックス線撮影である「マンモグラフィー」や「超音波検査」です。これらの検査で、乳房の外側からは触れることができない「非触知乳がん」も発見することができます。また、乳がんがあると現れやすい石灰化像などから、腫瘤(塊)になっていないほど小さい「無腫瘤性乳がん」の発見も可能です。
 
乳頭から分泌物がある場合は、乳管沿いの癌が疑われます。しかし、触ってもしこりが感じられない場合は、乳管に造影剤を入れてエックス線撮影をする「乳管造影検査」が有効です。それで異常がわかった場合は、「乳管内視鏡検査」が行われます。この内視鏡は直径0.7mmで、乳管のかなり奥まで入ります。ただし、この検査は今のところ、一部の医療機関でしか行われていません。
 
 

●細胞診、組織診

 
画像で癌の疑いがあると診断された場合は、細胞や組織の一部を採取して、がん細胞の有無を調べます。最近は、癌が疑われる部位の組織を正確に採取するのに有効な「ステレオガイド」という生検装置もあります。
 
乳がんのステレオガイド

 
 
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手術、ホルモン療法、化学療法などを組み合わせて行う
 
乳がんの治療は、「手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法」が4本の柱となります。それぞれの治療について詳しく説明していきましょう。
 
 

●手術

 
乳房の下には胸筋があり、さらに下には胸壁があります。かつては乳房と胸筋を切除する「パルスデッド法」が主流でしたが、現在はできるだけ温存する方法が主流となっており、パルスデッド法はあまり行われていません。
 
手術は、どこまで残すかによって、「乳房温存術」と「胸筋温存術」とに大別できます。なお、手術後は、必要に応じて、ホルモン療法、放射線療法、化学療法などを行います。
 
▼乳房温存術……乳房を残す手術法です。癌と乳房の一部を切除し、わきの下からリンパ節を切除します。この方法だと、手術前後で乳房の大きさはあまり変わりません。基本的に、「癌の大きさが3cm以下」「乳頭と癌との間が3cm以上離れている」「わきの下のリンパ節に転移がない」場合に行われます。癌が円形の場合には、腫瘍の周り2cmの範囲を切除するのが一般的です。癌が中央にくるように、円形に切除するのです。癌が乳頭に向かって進行している場合には、乳頭を頂点とした扇形に切除するのが一般的です。このとき、癌の左右に2cmの余裕があるように角度が決められます。
 
▼胸筋温存術……乳房とリンパ節を切除する手術です。基本的には、乳房温存術が行えない場合に行われます。乳房のふくらみはなくなりますが、胸筋は残すため、手術後にしびれやむくみなどといった後遺症が出ることが少なくなります。胸元の開いたYネックやUネックの服でも、手術跡は見えません。
 
 

●放射線療法

 
手術をしても、微細ながん細胞が残っていることがあるので、残ったがん細胞を死滅させる目的で、手術後に放射線療法を行います。
 
特に乳房温存術の場合は、乳房内の再発の可能性が残るため、放射線療法を組み合わせて行います。
 
 

●ホルモン療法

 
乳がんは、初め、エストロゲンの刺激で増殖します。そこで、手術後の再発を防ぐ目的でエストロゲンの分泌を抑えるホルモン薬を服用し、乳がんの増殖を抑えます。
 
これまでは、手術後1~2年間、毎日薬を服用するのが一般的でしたが、最近、5年間服用を続けたほうが効果が高いことがわかってきました。手術した乳房だけでなく、もう一方の乳房での発がんをも防ぎます。ただし、まれな副作用として、子宮体がん(子宮内膜がん)の発症を促すことが知られていますので、検査を欠かさないようにしましょう。
 
 

●化学療法

 
抗がん剤による治療です。ホルモン療法が効かない患者さんに行われます。1種類を内服する方法から多種類を注射で投与する方法まで、患者さんの病態や年齢に合わせていろいろな治療が行われています。
 
副作用は抗がん剤の種類や量によってさまざまです(脱毛、吐き気、白血球減少など)。最近は副作用を軽減させる「支持療法」が発達して、多量の抗がん剤を投与できるようになり、効果を上げています。治療期間は、普通手術後6か月間が基本になります。
 
乳がんの治療

 
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